浄土宗新聞

「蓮の会」で祈りの場を 東日本大震災 遺族の悲嘆を受け止める「蓮の会」で祈りの場を 宮城・西光寺

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遺族らが胸の内を話し合う「蓮の会」(左が樋口住職)

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災で最も犠牲者、被害の出た宮城県石巻市にある西光寺では、毎月11日に犠牲者遺族らの集い「蓮の会」を開いている。これは20人ほどの会員が悲嘆を受け止め合うグリーフケアの催しで、開催は150回を重ねる。震災以後さまざまな支援活動を続けてきた樋口伸生住職(60)は、これ以外にも被災者の苦難に寄り添う多彩な弔いの取り組みをする。
 あれから12年半となった9月11日の会では、本堂に犠牲者遺族の女性らが集い、関東などから傾聴支援に毎回訪れる「共生・こころの会」(伊藤顕翁代表)のメンバーでカウンセリング研修を受けた僧侶ら4人も同席した。
 

震災遺族らが参列しての慰霊法要

まず樋口住職が、繰り返し説いてきた「倶会一処」について、「亡くなった人に浄土でもう一度会いたいという願いは深い信仰の中でかなえられる。阿弥陀さまの助けを信じられるよう自分の魂に向き合い、良いことを自分で見つけ出して実行し、しっかり生きましょう」と分かりやすく話し、遺族としばらく歓談した。読経と十念、会員家族の回向が厳粛に続いた後、全員が木魚を打ちながら約20分間、ひたすら念仏する大きな声が本堂内に響いた。
 別室での茶話会は菓子を前に和やかな雰囲気。遺族らは近況報告や世間話で打ち解け、その中から故人の思い出話が出る。「亡くなった家族が知っている自分の姿に早く立ち直らねば」などの訴えに、僧侶たちはじっくり聞き入った。
 この話し合いでは、「周囲から『もう落ち着いたでしょ?』と言われて傷ついた」「どうして自分が生きているのか分からない」といった心情が涙ながらに吐露されることも多い。会の立ち上げから関わっている鈴木由美子さん(54)は「亡くした三男の枕経で『また会える』と聞き、どうすれば出来るのという気持ちで住職の話を聞いて来ました。それを他の遺族とも分かち合いたくて」と話す。
 檀家だけでも180人の犠牲者を送った樋口住職は「ご遺族は人には言えない悲しみをまだまだ抱えており、それを口に出したり静かに祈る場が不可欠です」と話し、キリスト教やイスラームも含めたさまざまな祈りのオブジェを樹々の間に配し、誰でも参拝できる「祈りの杜」も境内横に開設するなどしている。
(ジャーナリスト 北村敏泰)