浄土宗新聞

〝あそび〟テーマに寺院見直す 伽藍や催しを大幅リニューアル 大阪・應典院

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芸術・文化イベントや教育・福祉関係のシンポジウムなど多彩な取り組みで知られる應典院
(大阪市天王寺区=秋田光彦住職)が、伽藍や実施する催しなどを今春から「あそびの精舎」をコンセプトにリニューアル。オープン記念トーク行事を4月18日に開催した。

トークショーには若者も多く訪れた
トークショーには若者も多く訪れた


このリニューアルは、秋田住職の、仏教の魅力が社会で見えにくくなっている中で宗教的利他主義をとらえ直し、「スピリチュアルな市民との出会いも目指して、もう一度〝居場所〟という原点に戻りたい」という意図による。「あそびの精舎」のコンセプトは、仏があらゆる束縛を離れ心のままに人々を救うことを表す仏教語「遊戯(ゆげ)」や、子どものように自由自在に遊ぶことがいのちの本質であるとの認識に着想を得たものという。

構想設計は、さまざまな社会課題に対する想像力を育む活動をする社団法人「Deep CareLa b」(川地真史代表) と協同して実施。寺院のあり方を、死者や先祖、土地の歴史などの基盤、カフェなど誰もが「ただ居ることができる」場、アートや学びなど自由な表現活動の場、そして市民らとの多様なつながりによる社会実験の場の4階層に分けて理解し、墓地を見ながら語り合う「墓Bar」や、子どもたちと行うアート企画、看護協会と協働した健康相談の場「まちの保健室」など、各階層ごとに寺院という場を活かした催しを企画。

ハード面では、コンクリート打ちっ放しの現代建築のロビーが、広々としたスペースになり、床には極楽浄土の蓮をモチーフとした現代絵画をあしらっている(写真)。劇場型の2階本堂前には新たに多人数が集える板張りの「気づきの広場」を設けた。

ロビーでは来訪者が談笑する姿も
ロビーでは来訪者が談笑する姿も


18日のトークショーでは、浄土真宗の僧侶で、若手僧侶へ向け寺院運営について伝える「未来の住職塾」の松本紹圭(しょうけい) 代表が登壇。
松本代表は、「社会も学 校も課題をすばやく解決せねばという枠組みに縛られ、〝余白〟としてのあそびが足りていない。それが解けることが大事で。お寺はそういう場であるはず。リニューアルの想定にない試みが生まれてくればすばらしい」と、今後の展開への期待を語った。
(ジャーナリスト 北村敏泰)