厨子から「来迎菩薩画」本堂保存修理工事中に発見 大本山光明寺
国重文に指定されている大殿(だいでん=本堂)の保存修理工事が進む神奈川県鎌倉市の大本山光明寺(柴田哲彦台下=しばたてつげんだいか)で、このほど、大殿内の本尊「阿弥陀如来像」が安置されていた厨子(ずし)の中から色鮮やかに来迎菩薩(らいこうぼさつ)が描かれた壁画が発見され、話題を集めている。
大殿は、延床(のべゆか)面積931平方㍍(約282坪)、柱の内側の面積660平方㍍(約200坪)で、木造建築としては鎌倉市内でも最大の規模を誇る。
元禄11年(1698)に建立(こんりゅう)されて以後、江戸時代に4回、昭和に2回の大規模な修理が行われてきたが、前回から50年を経て、屋根や柱などの傷みが顕著となってきたため、令和元年11月から、建物の各部材を屋根から順番に取り除いて骨組みだけにする大規模な保存修理が行われている。
作業の過程で、本尊阿弥陀如来像が祀(まつ)られていた厨子上部の壁をはがすと中にも壁があり、一番外側の三層目に来迎菩薩の壁画が現れた。
描かれているのはヒノキの板で、横150㌢、縦90㌢ほどの大きさ。左右で一対となっており、数回にわたり描き直されてきたことも確認できたという。
解体直前の厨子内部には金箔が貼られ、荘厳な極楽浄土が表現されていたが、壁画が見つかった層は赤色に塗られていた。
現在、公益財団法人文化財建造物保存技術協会が調査を行っており、制作時期については今後の解析結果を待つことになる。
同寺では、発見された壁画を取り外し、劣化と剥落(はくらく)を防ぐため、表面に和紙を貼り桐箱に納め保管しており、今後は展示なども検討するという。
同寺の里見嘉嗣(かし)執事長は、「制作時期が特定されれば当時の世界観がわかる貴重な資料になるのではないか。壁画により、仏さまの世界を多くの人に届けられるようにしたい」と想いを語った。