浄土宗新聞

増上寺蔵 家康公収集の大蔵経(仏教聖典集成) ユネスコ「世界の記憶」日本の推薦候補に決定

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大本山増上寺(八木季生法主)と浄土宗(川中光敎宗務総長)は、同寺が保有する「浄土宗大本山増上寺三大蔵」について、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の「世界の記憶」への登録を共同で申請、11月10日、文部科学省が登録への推薦を発表した。
これを受け、11月12日に共同記者会見を開催、登録の趣旨説明を行い、経典の一部を公開した。

記者会見当日に公開された元版大蔵経の『阿弥陀経』の一部。経典には、徳川家や増上寺が所有していたことを表す三葉葵の紋が捺印されている
記者会見当日に公開された元版大蔵経の『阿弥陀経』の一部。経典には、徳川家や増上寺が所有していたことを表す三葉葵の紋が捺印されている

ユネスコの「世界の記憶」は、人類にとって特に重要な記録物を国際的に登録するもので、今回、日本の推薦候補に決定された三大蔵は、中国や朝鮮半島で印刷された3種類の「大蔵経(=仏教聖典の総称)」。
中国・朝鮮の各時代における印刷技術の粋を集めて制作されたもので、一番古いものは中国・宋代(12世紀)に、二番目は同・元代(13世紀)にいずれも中国で、三番目のものは1458年に朝鮮半島で印刷された。
各大蔵経は日本に渡った後、それぞれ各地の寺院で蔵されていたが、17世紀初頭に徳川家康が領地と引き換えに各寺院から大蔵経を集め、徳川家の菩提寺である増上寺に寄進した。その総数はあわせて1万2千点にも上り、3種類とも国重要文化財に指定されている
3種類の大蔵経が一堂に会すことは、世界的に見ても希有な事例で、これらを基に『大正新脩大蔵経』が出版され、現代でも世界の仏教研究の基礎となっている。また漢字文化、印刷文化の観点からも極めて重要な史料だという。
同寺の友田達祐執事長は「400年かけて守り続けてきた三大蔵に再び光があたり、うれしく思っております」と喜びを語った。
また川中宗務総長は「三大蔵がユネスコの登録候補になることは、令和6年に迎える浄土宗開宗850年に向けて、大きな弾みとなるもの」と話す。
三大蔵の登録の可否は2023年に開催されるユネスコ執行委員会で決定される。
浄土宗では現在「三大蔵」のデジタル化を進めており、浄土宗開宗850年となる2024年にウェブで公開する予定。

共同記者会見で、登録の趣旨説明を行う川中総長(左)と友田執事長(右)