誰一人取り残さない社会に SDGs実現へ 寺院が動く
「持続可能な開発目標(SDGs)」は国際社会共通の17の課題を解決し、誰一人取り残さない社会を実現するために、国連で採択された。その課題の一つ「飢餓をゼロに」の解決に取り組む寺院を取材した。
栄養満点の食事を 東京・全學寺
東京都足立区の全學寺(=大島俊孝住職)副住職・大島俊映師は、地元の子どもたちへの食事支援「にぎりむすびギフト」を主宰し、栄養のある食事を無料で届けている。
提供する食事は、地域の居場所作りを目的に活動する足立区任意団体「コミュニティKoen」の事業の一つである、おにぎり屋「にぎりむすび」のもの。大島師は以前から同団体の活動を手伝っており、同店の立ち上げにも携わったという。おいしく栄養がとれることにこだわった同店の食事を、コロナ禍で生活に不安を抱える家庭の子どもに届けたいと、今年6月から支援を始め、現在まで450食以上を提供している。
食材や調理などにかかる資金は、スポンサー依頼した地元企業に協力を募るほか、クラウドファンディングも実施。今年中に毎月400食を安定して届けることを目指す。
大島師は「自分がやっていることは誰でもできること。少しでも地域のお役に立てれば」と想いを述べた。
食品無料配布会場に 東京・祐天寺
東京都目黒区にある祐天寺(巌谷勝正住職)を会場に、「フードバンク目黒」が主催する食品の無料配布会が、9月から月に一度、実施され、事前予約制ながら30世帯以上が訪れている。
フードバンク目黒は、定期的に公共施設や寺院、教会などで、企業や個人から提供された食品や日用品を生活困窮家庭などへ無償で配布する活動をしている。
同寺での開催は、仏教精神を基調に、社会に向けて仏教文化の宣揚と世界平和に寄与することを目的とした全日本仏教会(戸松義晴理事長)が仲介したことで実現。同会は仏教界でのSDGs具現化を推進しており、同寺がその取り組みに賛同し、寺院と支援団体を結ぶことができたという。
戸松理事長は「寺院は地域に根差し、そこに住む人の要望に応えてきた。寺院と団体などが連携し、役割分担できれば継続した支援につながる」と語った。