秋の夜長にお念仏 お十夜
満月とススキ shimanto/PIXTA(ピクスタ)
秋も深まりをみせ、肌寒さを感じることも多くなってきたこの頃、夜、ふと空を仰げば、空気が澄んでいるせいか明るい月が美しく輝いています。
この季節、全国各地の浄土宗寺院では、「十夜会(=十夜法要)」が営まれます。
「お十夜」「十夜講」「十夜念仏」などとも呼ばれるこの法要。「十夜」とは「十日十夜」を略したもので、もともとは旧暦の10月5日の夜から15日の朝までの10日間、昼夜を問わず不断にお念仏をとなえる法要でした。現在では、10月から11月にかけて、数日間から1日と日数を短くして勤める寺院が多いようです。
浄土宗での十夜法要は、明応4年(1495)鎌倉の大本山光明寺第9世祐崇上人(1426‐1509)が後土御門天皇の命を受けて勤めたことにはじまります。この法要で、十夜法要が最初に行われた京都・真如堂の僧侶とともに、引声念仏(=独特の節を付け、雲版太鼓と双盤を打ちながらとなえる念仏)などを修したところ、天皇は大変感激され、光明寺で十夜法要を勤める許しを与えました。その後、広く浄土宗寺院で営まれるようになりました。
「十夜」の由来は、浄土宗が拠りどころとするお経の一つ『無量寿経』に、「煩悩(ぼんのう)や苦しみの多いこの世界で十日十夜の間、善い行い(善行)を修めることは、迷いのない仏の世界で千年にわたって善行に励むよりもすぐれている」との一節にあります。
浄土宗にとって最も功徳をいただける善行とは、「南無阿弥陀仏」とお念仏をとなえることに他なりません。
法然上人は、「南無阿弥陀仏の6文字のなかには、阿弥陀さまのあるゆる功徳が込められている」とおっしゃっています。
また、お念仏をとなえることは、時も場所もかかわらず行うことのできる行でもあり、阿弥陀さまは、「すべての人を一人も漏らさず救いたい」との願いから、そのような「易しい行」としてくださいました。
私たちのとなえるお念仏の声は、必ず極楽浄土の阿弥陀さまのもとに届いて、いずれは訪れる自身の往生のためはもとより、先立たれた大切な方への最上の回向となります。
多くの人が集まることが難しいご時世ですが、無理のない範囲で菩提寺やご家庭でお参りする際は、このことに想いをいたしてお念仏をおとなえしましょう。