浄土宗新聞

浄土宗南米開教区 本堂建立事業を始動 ブラジル・クリチバ日伯寺

投稿日時

法然上人のみ教えを、海外の地で広めることを目指す浄土宗の海外開教事業。このなかで、南米・ブラジルで開教活動を行う浄土宗南米開教区が、令和5年に開教70周年を迎えることを記念し、同国パラナ州クリチバ市にあるクリチバ日伯寺の本堂を建立する。

新たに建立されるクリチバ日伯寺本堂の完成予想図。本堂を中心にさまざまな活動に対応できる大小ホールなども設けられる計画。設計やレイアウトは同寺信徒らが手掛けている。
新たに建立されるクリチバ日伯寺本堂の完成予想図。本堂を中心にさまざまな活動に対応できる大小ホールなども設けられる計画。設計やレイアウトは同寺信徒らが手掛けている。

浄土宗は、海外での開教を明治31年(1898)に制度化、現在世界4カ国(アメリカ、ブラジル、オーストラリア、フランス)に拠点を置き、開教活動を行っている。
そのなか、ブラジルで開教活動を行う南米開教区は、昭和29年(1954)に浄土宗の特命開教使で、後に同開教区初代開教総監となった長谷川良信(はせがわりょうしん)師を派遣し、サンパウロで活動したことに始まる。同師は「宗教・教育・福祉の三位一体」を基本理念とし、日本語学校なども運営。2代開教総監・佐々木陽明(ささきようめい)師は、養老ホームを建設するなど、開教活動を進めるとともに社会福祉活動にも力を注いだ。
現在、ブラジル国内には、南米浄土宗別院日伯寺(サンパウロ州サンパウロ)、マリンガ日伯寺(パラナ州マリンガ)、イビウーナ日伯寺(サンパウロ州イビウーナ)、クリチバ日伯寺(パラナ州クリチバ)の4カ寺が存在し、5名の浄土宗開教使(開教活動に従事する浄土宗僧侶)が所属している。
そのうち、クリチバ日伯寺は平成20年(2008)に、一軒の借家に本尊を安置し始まり、開教使らの地道な活動により信徒を増やし、平成30年(2018)に営んだ五重相伝会(浄土宗の奥義を授ける法要)の受者から、開教使を志す人物が生まれるなど、ブラジル南部地域の念仏道場として発展してきた。
同寺主任開教使・大江田晃義(おおえだこうぎ)師(42)は、「仏教に馴染みがない現地の状況を打開するため、長年念仏講や精進料理研究会などの文化的活動による接点を作ってきました。活動を通じ、信徒同士での縁も深まりました」と活動の歩みについて話してくれた。
信徒のみならず、仏教文化に興味を持つ方や、悩みの相談に来る方など、さまざまな現地の人々を受け入れる同寺では発足当初より正式な本堂の建立が望まれていた。
そこで令和5年(2023)に開教70年を迎えるのにあわせ、初代総監の長谷川師が掲げた理念に基づき、ブラジル南部の念仏信者の精神的支柱、今後のブラジルを支える人材の育成、ブラジルの現代社会への貢献という三つを目標とした本堂の建立を発願した。
3代開教総監・佐々木良法(ささきりょうほう)師(58)は「令和元年に遷化された先代開教総監の佐々木陽明師は、いち早い本堂建立を望んでいました。時代に合わせた機能を備えた本堂の建立を成し遂げ、南米開教区の発展に努めていきたい」と建立への強い想いを語った。
南米開教区をはじめとする浄土宗の開教の詳細は、浄土宗開教ネットから。

クリチバ日伯寺での活動の様子。御忌や彼岸会などの布教活動のみならず、書道や精進料理といった文化を伝える場にもなっている
クリチバ日伯寺での活動の様子。御忌や彼岸会などの布教活動のみならず、書道や精進料理といった文化を伝える場にもなっている。