浄土宗新聞

いのちの尊さ学ぶ こども環境クラブ 滋賀・西方寺

投稿日時

琵琶湖の南、大津市田上地区にある西方寺は山や川、田んぼに囲まれたのどかな地域の良さを守ろうという「TANAKAMIこども環境クラブ エリアマスター育成プロジェクト」に取り組んでいる。
(ジャーナリスト・北村敏泰)

子どもらに生き物観察のコツを説明する尚子さん(中央)
子どもらに生き物観察のコツを説明する尚子さん(中央)

開発により旧家や新興住宅が混在し、地域が激変する中で、IT社会に育つ子どもらに故郷の自然や伝統文化に触れてその素晴しさを感じてもらいたいと、同寺寺庭婦人の安部尚子(たかこ)さん(61)が中心になり檀信徒や地域の児童、保護者に呼びかけて3年前に開始。同寺隆瑞(りゅうずい)住職(66)の支えを受けながら毎月多彩な行事を運営してきた。
近くの里山である田上山や大戸川での生物観察、清掃活動、歴史的施設の見学会、水事情や動植物について学ぶ(寺での)勉強会、ワークショップなどの催しを続け、幼稚園児から小中、高校生まで毎回20人程度が参加している。
10月8日にはサツマイモ掘りと「生き物探し」に10数人の子どもらが参加。スコップを手に見事に育ったイモを掘り出しては歓声を上げていた。水路で見つけた魚などの説明をボランティアの大学生から聞いて学習し、焼いたイモを美味しそうにほおばる姿も。

楽しそうにイモ掘りをする子どもたち
楽しそうにイモ掘りをする子どもたち

田上地区は過去に相次いだ水害から地域を守るため、明治時代から植林や外国人技師による砂防堤建設が行われ、世界共通に英語で「sabo」と呼ぶ「砂防」の発祥地と言われる。「菜の花漬け」など独特の食文化もある。一方で現在は、高速道路建設なども進んでおり、尚子さんは「そんな長い歴史文化も伝えていきたい」と訴える。園児と参加した若い母親は「生まれて初めてカエルを見た子は恐る恐る触れ、親子で楽しく時間を過ごせました」と感動していた。
隆瑞住職も「地域を活性化するには、そこに住んでいる私たち自身の気付きが重要。地域の核でもある寺にはその役割があり、それが″ともいき〟。環境の中にあるたくさんの″いのち〟を尊重することを教えるのが仏教です」と言い、参加者にミニ法話も行う。
活動の様子を撮影して動画配信サイトYouTubeで発信、報告集も出している尚子さんは、「地域を守り、子供たちの成長の一端を担う場を提供し、また年配の方と交流したり、郷土史研究者など地域の人材とも協力し合いたい」と今後の抱負を語った。