令和7年3月

投稿日時

歌壇
堀部知子 選 投歌総数119首

岩手 小野寺満

初マラソン「パパがんばれ!」の応援に力を貰い笑顔のゴール

大阪 林 孝夫

娘から畑の野菜ありがとう鍋で食べたよキャベツが甘い

京都 観山ひろくに

親戚のダックスフントはよく吠える吾の迷いを見透かすごとく

大分 小林 繁

アケビ熟れ落ちんばかりの通学路令和の子らは仰ぎ見もせず

福井 杉谷小枝子

別れゆく友が残せしサボテンが見事に開き初春を寿ぐ

埼玉 山本 明

夢に見し人はさやかに見えねどもあな懐かしき心地にて覚む

宮城 曽根 務

目指したる親父の歳超え喜寿も超え二年後は傘寿足腰に問う

青森 中田瑞穂

若くはない私が今朝も映りいる口角上げて瞬き三回 

宮崎 小野加子

蝋燭の明かりもらいて観音堂寒中の朝いまだ暗きに

京都 根来美知代

新しき机届きて真っ先に立てて納める怪獣フィギュア

長崎 片岡忠彦

山桜の蕾ふくらみ里人の今は忙しく田起しさなか

大阪 津川トシノ

ひと山をくぐればそこは青い海弾ける波の冬のたわむれ

大阪 津村仁美

厨房ではあったか食事を用意して職員さめぬように急ぎ配る

京都 赤尾智子

年の瀬に嫁ぐ娘の幸願い先祖の墓に寒菊供える

奈良 川本惠子

六十年過ぎても母校はなつかしく麦生ひらけて紅梅の咲く

結句「六十年過ぎても」を初句に移動。

俳壇
坪内稔典 選 投句総数198句

大阪 津川トシノ

水ぬるむ包丁をとぐ鼻眼鏡

「水ぬるむ」が春の季語です。鼻眼鏡に笑ってしまったが、その笑いが春をさらに引き寄せる感じ。包丁、きっとうまく研げたでしょうね。

愛知 山崎圭子

ラガーらのスクラムの中つとボール

「つとボール」がいいです。テレビでラグビーの試合を見ていると、スクラムの中からたしかに「つと」ボールが出ます。

山梨 山下ひろ子

人類の移住の話冬銀河

今から五〇億年後、太陽は寿命を迎えると言います。もしそのころまで人類が生きていたら、さて、どこへ移住するのでしょうか。

福岡 伊熊悦子

盛り塩の尖り際立つ淑気かな

福岡 伊熊朋則

願掛けの諸手にしかと初明り

東京 中鉢和弘

冬籠りたんたんと今やり過ごす

大阪 原田峰子

冬の日やハルカスのぞむロータリー

和歌山 福井浄堂

境内の白猫走る年の暮

兵庫 堀毛美代子

老いもまた笑ひの種や冬日向

福岡 古野ふじの

生かさるるまだまだ生きる老いの春

富山 山澤美栄子

冬うらら立山お供にショッピング

三重 森 陽子

里帰り先ずのもてなし炬燵なり

滋賀 山本祥三

風花や妻は堅固でいて欲しく

米国 生地公男

塀の上朝日にぬくぬく冬の猫

京都 岡田直子

腓返り生きてる証みぞれ降る

青森 中田瑞穂

八方の見ゆる吊り橋梅日和

京都 根来美知代

春炬燵昭和の写真並べ立て

大阪 光平朝乃

少し着飾り日帰りの旅はじめ

京都 観山哲州

老僧の読経と似たる虎落笛(もがりぶえ)

東京 山崎洋子

枕辺に歳時記二冊寝正月

石川 山畑洋二

霊峰を描くカンバス冬晴間

青森 吉田 敦

特老の祖母煤払せむと言ふ

静岡 太田輝彦

腰掛けし縁先ぬくし春隣

原句は「濡れ縁」でした。「縁先」のほうが季語「春隣」と響き合う気がします。