令和8年2月

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歌壇
堀部知子 選 投歌総数126首

富山 山澤美栄子

叔母白寿雪の立山なつかしむ移りし都会は何色だろうか

作者のやさしさが一首からあふれる。下句がとても良く、ご長寿の叔母様への限りない思いが見事。

東京 蚫谷定幸

凸凹の柚子のフォルムが愛しくて幾度も触る入浴のとき

入浴の時の一首。なにげないことでありながら、作者はあらためて柚子のフォルムの愛しさを知る。

神奈川 上田彩子

猫のいた出窓に今日はシクラメン二鉢飾る白と紅

猫はもう亡くなったのでしょうか、この一首から猫への回想がはじまる。自ずと場面が見えてくる。

神奈川 小笠原嗣朗

嫁の名を時に忘れる母なれど「素敵」と褒めるブ ラウスの柄

岩手 小野寺満

わが趣味を取り上げ記事にしたる記者本社勤務と 挨拶に来る

静岡 河合しのぶ

水退いてタニシが描くはピカソ風田んぼの脇の泥 のキャンバス

埼玉 川田芳章

白鷺の脚の細さで思い出す昔流行ったツイギー娘

埼玉 塚﨑孝蔵

崇むるや足利に建つ鑁阿寺の庭先に立ち眺むる月よ

青森 中田瑞穂

今朝もまた浮かびし言葉すぐ忘れ脳鍛へんとパズ ル解く夕べ

大阪 根来譲二

をちこちに梵鐘響む洛中か音はこもごもに伝ひ来 るかも

京都 根来美知代

ぺンと紙で妄想詭弁欲しいまま歌の中では二十歳 にもなる

大阪 林 孝夫

海外の孫が入試をオンラインで受ける時代の変化 に驚く

和歌山 宮本博信

年の瀬に今年一年を振り返る無事小難に両手を合わす 

群馬 新井日出子

熊が駅に侵入したよと校長宅に警察からの連絡のあり

京都 荻野 浩

かの夏の暑さに泣きひ人々が今日は襟立て家路を急ぐ

初句「あの夏」「暑さに泣いた」を直す。

俳壇
坪内稔典 選 投句総数288句

富山 山澤美栄子

立山冠雪オンザロックはいかがかと

オンザロック、うまそう! この句のように具体的な情景を表現すると、その情景を通して作者の気持ちが読者に伝わります

神奈川 上田彩子

猫のいた出窓に紅きシクラメン

この句も情景が具体的です。猫が今、シクラメンに変身して出窓にいるみたい。ちょっと粋な油絵のようです。

山梨 山下ひろ子

ロボットに答える老女冬帽子

どんな冬帽子か、読者が想像して楽しめます。自分で編んだ毛糸の帽子かも。

福岡 伊熊朋則

中指に歯形の残る革手袋

東京 伊藤 文

冬空に威風堂々タワーかな

群馬 長田靖代

病院の夕餉待つ間の相撲かな

大分 小林客愁

すすき野を背なに異国へ続く海

滋賀 小早川悦子

ぴんと貼る襖は母の年用意

神奈川 藤岡一彌

熱燗や机上の空論諤諤と

埼玉 東 咲江

立冬や電池替えおく血圧計

滋賀 三宅俊子

参道の落葉踏む音あるばかり

大分 吉田伸子

秋夜長地震速報深夜便

福岡 稲永順士

始発待ち息白く立つ車掌かな

静岡 太田輝彦

居酒屋の二代目のれん十三夜

京都 大八木純正

お年賀や笑顔に会いに家々へ

京都 岡田直子

年の瀬にからくり時計復活す

京都 神居義之

快晴の師走一日道半ば

東京 小室清恵

柴又の土手に広がる小春空

長野 出澤悦子

ロボットの掃除機勤労感謝の日

奈良 中村宗一

姉メールヒートショックに気をつけて

大阪 根来譲二

ぐつぐつと具はふるふるとおでん鍋

京都 根来美知代

立春大吉奮発の飯茶碗

滋賀 増田節子

孫たちへ風呂柚子送る大量に

原句は「孫達大好き風呂柚子多量送る」だった。「大好き」の思いを、末尾に置いた「大量に」にこめた。柚子風呂を楽しむ孫たちが目に浮かぶ。