令和4年10月

投稿日時

浄土歌壇
堀部知子 選 投歌総数166首

埼玉 岸 治巳

ザリガニはカラスの子供の離乳食農道行けば抜け殻数多

上句のことを知る人は少ないかも知れない。私もその一人。一つ知識を得た思いで受け止めた。

和歌山 原 鉄也

ワクチンを打って来たよと誇らしく細君細腕僕に見せたり

ほほえましい一首。結句の「僕に見せたり」は例えば「われに見せたり」とするより若々しい。

群馬 新井日出子

赤城嶺に雲湧き裾野ふる里の父母の墓炎暑に掃除

上句で情景が見えてくるように広がりを見せる。一首を詠み終えた後の作者の安堵感が伝わる。

奈良 畷 崇子

ヘリの音だんだん遠のく真夏昼どの病院へかその無事祈る

宮崎 小野加子

小四の孫の頭は坊主なり声変りしてまた年を加う

岡山 小川信男

初めてのスーパーへ買物に一人行く押すカーターに戸惑いながら

愛知 横井真人

純白のカサブランカの花咲きぬ笑顔の妻の遺影に供ふ

兵庫 吉積綾子

戦争のニュースを見るたび思い出す九死に一生得し壕の中

滋賀 大林 等

縁側で仏具を磨くお盆前在りし日の母の面影偲び

宮崎 髙平確子

結婚式に孫ら集いて酌み交わし談笑するさま見るさえ嬉し

東京 蚫谷定幸

ドカベンを描いた水島新司さん夏の大会空から見てる

兵庫 堀毛美代子

ウイルスは何度も変異四度目のワクチン接種明日はその日に

青森 中田瑞穂

病根も吾の孤独も胃カメラは捉えんとして胃の腑に動めく

滋賀 三木憲治

盂蘭盆を控えて亡姉は一張羅の大島紬をきっと着ている

元歌は「盂蘭盆を控えて亡き姉今頃は一張羅の大島着ているかな」であった。下句に一工夫が欲しかった。結句は特に大切にしましょう。

浄土俳壇
坪内稔典 選 投句総数264句

岩手 佐々木敦子

初めてのブックホテルへ夏休み

ブックホテルはマンガや古典などの本のあるホテル。一人旅、若いカップルなどに人気らしい。ちなみに作者は九〇歳。

和歌山 福井浄堂

貴婦人のつんつんといく日傘かな

「つんつんといく」がいいなあ。目にうかぶ。実は私も日傘を愛用している。私の日傘のスタイル、紳士に見えるかなあ。

青森 中田瑞穂

久しぶりの秋の句会よ何話そ

「何話そ」が久しぶりの感じを具体的に伝える。中田さん、投稿は十句ぐらいにしぼってどうぞ。自選(自分の句を自分で選ぶ)の力もつけてください。

岩手 菊池 伉

山百合を咲かせ宝暦飢饉塚

群馬 本多義平

新米を飯盒で炊く終戦日 

佐賀 織田尚子

フレイルを通過中です夾竹桃

長崎 久田浩一郎

昼寝覚アップルジュース一息に

兵庫 吉積綾子

蹴り脚の一本長き茄子の馬

滋賀 三宅俊子

ハムスター預かることも夏休み

兵庫 堀毛美代子

あんパンとコーヒー牛乳夏の昼

京都 孝橋正子

供へるや枝いっぱいのミニトマト

長崎 松瀬マツ子

部屋籠夕焼け小焼け赤トンボ

石川 五十嵐一雄

きな臭き畳となりぬ大西日

埼玉 三好あきを

八月やそこの魚版を叩きたし

山梨 山下ひろ子

二人してワクチン四回夏蛙

神奈川 中村道子

雲の峰子の手のひらに団子虫

東京 山崎洋子

先生が薬味つぎ足すどぜう鍋 

大阪 大内由紀夫

秋の蚊の人差し指に来て止まる

長崎 片岡忠彦

毎度来て俺を観察姫あかね

三重 森 陽子

自転車に横乗り日傘昭和かな

滋賀  大林 等

猛暑日は一日ひとつ仕事する

原句は「仕事決め」だった。「仕事する」と言い切って、猛暑への対処を明確に示した。