令和4年11月

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浄土歌壇
堀部知子 選 投歌総数202首

宮城 西川一近

選手らを尊敬すると云う監督の言の葉強く心に響く

監督のひと言ひと言は、選手には勿論のこと、応 援する人、テレビを見ている人にも心に響く。

滋賀 大林 等

ひと粒の種より出づる秋野菜ありがたきかな自然 の恵み

詠われているとおりで、その成長のよろこびはあ りがたいと言うより他にない。結句に一工夫欲しい。

京都 木瀬隆子

顔を見るだけで良いのよ捥ぎたての茄子など置き て娘は帰る

娘さんの心づかいがストレートに伝わる。一、二 句のその何げなさが、この一首に弾みをつける。

宮崎 小野加子

夏休みの終りの時に聞こえくるプール監視の声響 きたり

広島 山本玲子

友よりのラインメールに伝え来し「朗老介護」に 心安らぐ

長崎 久田浩一郎

視力落ちスマホの操作たどたどし兎と亀の亀にも なれず

愛知 三澤貞子

夫逝きて部屋広くなり娘のくれしポトスの緑に癒 されており

兵庫 吉積綾子

ひょっこりと亡夫が帰って来たような彼岸花咲く庭の片隅

滋賀 三宅俊子

入院の朝の遺影は話すごと返事はひとつ頑張るか らね

兵庫 斎藤一義

盆ならば里帰りする霊ならん今年わが家は吾さえ 不在

宮崎 髙平確子

コロナ禍に何して暮そう今日この日雑事はあれど 心楽しまず

青森 中田瑞穂

コスモスの種をたくさん蒔きましたコスモス色の 風が見たくて

大阪 林 孝夫

カンボジアに住む孫たちがマレーシアに旅行する とう何を学ぶや

長崎 吉田耕一

海原の潮を分けゆくその舳先小さな虹が次々生る

三重 服部浩子

カラフルな始発電車に思いきり手を振り憂さをは るか遠くへ

四句目「憂さも」であったが「憂さを」に。

浄土俳壇
坪内稔典 選 投句総数261句

群馬 木村住子

水洗ひする秋茄子のついと浮き

「ついと浮き」がいいなあ。茄子の弾力がいきい きと感じられる。この秋、わが家の夕べはもっぱら 焼きナスと白ワインでした。

神奈川 中村道子

貴猫じゃらしふりふり歩きパン屋まで

この余裕もいいなあ。こんなふうにパン屋へ行っ たら、あんパンなどがとってもうまくなるかも。

大阪 岡崎 勲

親父から荷造り雑に今年米

雑な荷造りが父の米のうまさを伝える。要するに、「荷造り雑に」がこの句のよさ。

東京 樋口七郎

新宿の駅前草むら百日紅

岩手 菊池 伉

納涼花火昔一揆の集結地

大阪 津川トシノ

秋の風短足なれど颯爽と

長崎 片岡忠彦

石蕗の花咲いて明るくよく笑う

兵庫 堀毛美代子

秋澄みてけんけんぱの子手を母に

愛知 吉田喜良

夏空やどこもかしこも雲ばかり

群馬 長田靖代

夏風邪や富山の薬あればこそ

兵庫 吉積綾子

風と風語り合ふごと秋桜

長崎 平田照子

花野行き自由乗降バスに乗る

和歌山 福井浄堂

井戸水の汲む音高し今朝の秋

大分 小林客愁

絵手紙で届く涼風一グラム

愛媛 千葉城圓

初秋の海の碧さの輝きて

大阪 西岡正春

天平の校倉を守る女郎蜘蛛

兵庫 中西一朗

泳ぎきり翼のごとくタオル負い

青森 中田瑞穂

水音の句碑を離れず大やんま

山梨 山下ひろ子

秋の雲百四歳の一日かな

神奈川 上田彩子

肝心の猫がいないわ猫じゃらし

秋田 高橋さや薫

気怠き日つややかな赤唐辛子

京都 根来美知代

秋うらら降車釦を競う指

大阪 林 孝夫

ツクツクに乗って孫たち学校へ

長崎 吉田耕一

いがぐりや厨の椅子を占拠する

東京 山崎洋子

山寺の力こんにゃく秋暑し

大阪 光平朝乃

空き地には屁糞葛の濡れており

東京 津田 隆

散歩する妻の帽子の赤とんぼ

原句は「帽子に」。二つの「の」が楽しい。