盛岡愛があふれ出す! 心ゆさぶる手仕事の味 割烹 惣門
岩手県盛岡市・吉祥寺檀信徒
盛岡を訪れると旅をしているのを忘れることがある。それくらい飾らない印象があるが、食べ物を口にすると我に返る。とにかく食材が魅力的で、清々しく誠実な味がするのだ。
今回訪れた『割烹 惣門』も、まさにそんな店だ。
女将の鈴木紀代(のりよ)さんの案 内で、まずはお通しを。山菜、ニシンの山椒煮など、丁寧な料理が5~6品並ぶぜいたくさに、いきなり感動。
続いて、名物の特製茶碗蒸し。まずその大きさに驚き! 一般的なサイズの2倍以上ありそうだ。蓋を開けると、エビ、カニ、ウナギ、イカ、焼きウニなど9品の海鮮が! 豪華さと大きさに驚いていると、「これは、ぜひ一人で食べてもらいたいんです」と二代目の鈴木秀哉(ひでや)さん。
食べ始めるや、すぐにその理由がわかった。柚子の香り、香ばしさ、なめらかな舌触り……ひと口ごとに味や食感、香りが変わって楽しいのだ。最後までワクワクしながら完食。
秀哉さんは、仕込みの手を止めて話してくれた。
「昨年秋に父が他界しました。父は指示したり教えたりするタイプではありませんでした。だから舌と目が頼り。今も記憶を辿りながら料理しています」
紀代さんも「毎日食材を見ながら料理の相談をして、二人で仕込みをするの。春は山菜の下ごしらえが大変~!」と笑う。
話を聞いている間にも、常連の釣り名人、山菜採り名人が顔を出し、新鮮な食材の差し入れが届く。
「この店は地域に育ててもらっています。だから、人、物、事、すべてにありがとうと伝え、ありがとうと言われる人生を歩みたいです」秀哉さんの言葉から、誠実さがあふれ出す。
7月には名物の鮎の天ぷらと骨せんべいが登場。うじ茶で低温調理するというナマコ酢も、旬の野菜で仕込むおしんこも食べてみたいし、県外不出の地酒も楽しみたい。お二人にもまた会いたい。盛岡を旅する。理由がまた増えた。
(フードライター: 藤岡操)
店舗情報
- 〒020-0873
- 岩手県盛岡市松尾町5-2
- TEL:019-654-6123
- 営業時間=17時〜22時(L. O21時)
- 定休日=日曜・祝日
- JR「盛岡駅」よりタクシーで8分または、バス利用で20約分
(「盛岡バスセンター下車」徒歩約8 分) - TEL予約推奨 (受付時間13時~22時)