浄土宗新聞

これぞ名物! 桑名の蛤を ユニークな「蒸寿司」で堪能する 俵寿司

投稿日時

桑名市・十念寺檀信徒

東海道で、かつて宿場町として栄えた桑名。『七里の渡し』という名の東海道唯一の海路であり、渡船場があったことでも知られている。なかでも桑名城の辺りはかつて『桑陽園』という花街として賑わい、料亭や置屋などが立ち並んでいたそうだ。今でこそ面影を残す建物は少ないが、文豪・泉鏡花が投宿した『船津屋』はまだ健在である。
桑名といえば名物の蛤。珍しい蛤の「蒸寿司」を味わえる寿司店があると聞き、桑名城近くの『俵寿司』を訪れた。

焼き蛤の蒸寿司(5個・2,200円)は、蒸すのに30分程度かかるため予約がベター
焼き蛤の蒸寿司(5個・2,200円)は、蒸すのに30分程度かかるため予約がベター

木戸をカラカラと開けると、朗らかなご主人と優しい女将さんが迎えてくれる。現在四代目の三谷一紀(みたにかずき)さんに、桑名の蛤がなぜ有名なのかを聞いてみると、淡水と塩水が混じり合う穏やかな内湾の汽水域で育つため、厚みがなく身が柔らか、そして旨みが強いのだと教えてくれた。
ところで、名物の「蒸寿司」とは何であろうか。ちらし寿司がせいろに入っているものだが、それを聞くと釜飯のようなものを想像するかもしれない。しかしこちらの蒸寿司は炊き上がった酢飯を蒸したもの。由来を聞いてみると、ご主人が「寒い時期に冷たい寿司では、お客さまも喜ばないだろう」と考えたのがきっかけだという。
酢飯に歯ごたえのあるかんぴょうと風味豊かな穴子を混ぜ、錦糸卵と海苔、そして醤油とみりんで味を付け、焼いた蛤を飾ったところ、大評判になった。
せいろの蓋を開けると、ふわぁっとした湯気と食欲をそそる香りが漂ってくる。蛤を口に入れると、プリッとした柔らかな身と染み渡るような旨み、そして上品な香りがふんわりと広がり、このうえない至福感に包まれる。
しっかりと漬け込まれた煮蛤の握りや、驚くほど大きく新鮮な白魚の軍艦もいただいたが、丁寧な仕事ぶりが伝わってきた。
この一帯はすでに花街の面影はないが、かつての料亭が業態を変え、今風の店として生き残っている。「五代目は大阪で修業中。寿司より日本料理が好きみたいだから、寿司屋は私の代で終わりでもいいと思っているんですよ」と三谷さん。
大将の真摯な思いはそのままに、ずっとこの地で店を続けてほしい。
(ライター:岡本茉衣)

店舗情報

四代目店主の一紀さん。東京・根岸で江戸前寿司を修行した
四代目店主の一紀さん。東京・根岸で江戸前寿司を修行した

〒511-0022 三重県桑名市江戸町7
TEL:0594−21−5454
■営業時間=11時30分~14時、17時~22時(L.O21時30分)
■定休日=火曜日、第三水曜日ほか不定休
■JR「桑名駅」から徒歩16分、三重交通「本 町」バス停から徒歩2分
■駐車場あり(5台)
■HP=https://www.city.kuwana.lg.jp/kanko/taberu/hamaguri/hamaguri007.html
※価格は税込