浄土宗新聞

【浄土宗の読む法話】「約束」

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「また明日会おうね。」
私たちは、家族や友達、また色々な人と会った時、挨拶をします。そして、時には約束も交わします。
「次は◯月◯日の◯時にこの場所で。」「今度くる時はまた楽しい話をしましょう。」簡単な約束、重要な約束、色んな約束がありますが、約束とは私たちの未来へのつながりを願った誓いといえます。

私には、Sくんという幼なじみがいました。幼稚園、小学校、中学校と同じで、地元の祭りにも一緒に参加する仲のいい友達でした。
高校3年の時、Sくんは首から肩にかけて痛みを訴え、入院することになりました。実はその時、悪性の腫瘍が彼の身体をむしばんでいたのです。若いということもあり病気の進行が早く、Sくんはだんだんと衰弱していきました。

「絶対に治る!」そう信じて疑わない彼と私たちでしたが、ある日、Sくんは私にこう言いました。「亡くなったらどうなるのかな。」彼は猛烈な不安と戦っていたのです。私は彼に対して、「極楽浄土で阿弥陀さまや先に亡くなったおじいちゃん達が待っているから、心配ないよ。」と答えました。

極楽浄土へ行くためには「南無阿弥陀仏」とお念仏を称えること。これが極楽浄土をおつくりになった阿弥陀仏の願いであり、浄土宗をお開きになった法然上人のみ教えです。Sくんは両手を合わせ、「南無阿弥陀仏」と称えました。
「もし亡くなっても、極楽で待ってるからまた会おうな。」Sくんと私は約束をしました。

Sくんはそれから後、この世での命を終えていきました。しかし彼は、極楽浄土に生まれ、私たちが来るのを待ってくれています。
「生まれては まず思い出ん ふるさとに 契りし友の 深き誠を」
法然上人は、自らが浄土に生まれた後は、この世でお念仏の行に励んだ仲間と極楽浄土で会う約束を、まず第一に思い出すであろうと、お詠みになられました。すなわち法然上人の約束であります。お念仏を共に励ました友との極楽浄土での再会の約束です。

阿弥陀仏は「我が名を呼べば、必ず極楽浄土へ導くぞ」とお誓い下さいました。これはすなわち阿弥陀仏の約束です。阿弥陀仏の約束は、お念仏を申す私たちを救うことであり、決して破られる事のない約束であります。
この世での命が終わっても、「極楽浄土でまた会おうな。」と約束したSくんとの再会を楽しみに、また、阿弥陀仏、法然上人との約束を果たすために、これからも一層お念仏に励んでいきたいものです。
合掌 

大阪教区 泉北組 西光寺 寺尾昌治