【浄土宗の読む法話】お念仏の秋
日増しに秋を感じる季節となりました。
紅葉の名所などを訪れ、行楽の秋を楽しむ方も多いことと思います。また、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋などともいわれ、一つのことに集中して取り組める季節ではないでしょうか。
浄土宗では毎年10月、11月に「十夜法要」が各お寺で行われます。
お寺にお参りに来られた皆さんとご一緒に、お念仏をおとなえする法要です。そしてすべての恵みに対し、感謝する法要でもあります。
中国の儒学者孟子は子どもの頃、墓場の近くに住んでいましたが、孟子が友達とお葬式ごっこばかりして遊んでいるので、親が心配して市場の近くへ引っ越しをしたそうです。
市場の近くに住むと、今度は商人の真似ばかりして遊ぶので、学校の近くに引っ越したそうです。
すると礼儀作法の真似ばかりするようになり、孟子の母は「この地こそ子供にふさわしい」と、その地に落ち着いたそうです。
この「孟母三遷」の話は、人間にとって周りの人や住む環境が大切という教えです。
お寺の本堂は、仏様に見守られ、周りの方とともにお念仏をおとなえする素晴らしい環境です。
故人となられましたが、お寺の法要に熱心にお参りされた田中和子さんという方がいました。
この方は、お元気なころ「十夜法要」の日程表を作り、寺町寺院群内の浄土宗寺院12か寺をほとんど休むことなくお参りされていました。
「うちのお寺だけだと1日昼夜の法要ですが、これで十日十夜のお参りができました。やっぱりお寺の阿弥陀さまの前で皆さんとお念仏をおとなえすると有り難いですね」。と話されていたのを思い出します。
お念仏の秋、さわやかな秋晴れのもと、それぞれの菩提寺、お近くのお寺の「十夜法要」にお参りされ、お念仏をおとなえする時間をつくられてはいかがでしょうか。毎日の忙しさにせかされて、つい忘れがちな心のゆとりも、きっと見つかるはずです。皆さんのおとなえする「南無阿弥陀仏」の声が、ご先祖さまへのご供養となり、わたしたち自身が阿弥陀さまの西方極楽浄土への往生をかなえる大きな大きな功徳となるのです。
合掌
石川教区 大蓮寺 高島訓堂