日々のおつとめ―浄土宗日常勤行式 第1回
浄土宗には日常勤行式(にちじょうごんぎょうしき)というお経の式次第があります。これは常日頃おつとめする読経のことで、年忌をはじめ多くの法要の基本ともなっています。今回から、この日常勤行式の式次第を追いながら、その意味するところや意義を考えていきましょう。
皆さんは、毎日どのくらいの時間、お仏壇の前に座っていますか?
日々の生活の中で、わずかな時間でも仏さまやご先祖さまに手を合わせ、心を落ち着かせる時間を持つことは本当に良いものです。
それでは早速、おつとめの話を…の前に、まずは家庭の信仰の中心である、お仏壇を確認しましょう。
地域や宗派などで異なりますが、お仏壇の形や構造は、お経に説かれる仏の国の様子や、寺院の本堂を参考に作られています。例えば中央上部は須弥壇と呼ばれ、仏教で世界の中心にそびえ立つとされる須弥山に由来し、装飾は浄土の様相を、扉はお寺の山門を模したものとされます。上段中央に本尊、向かって右に慈悲を表す観音菩薩、左に智慧を表す勢至菩薩、または、お念仏の教えをお伝えくださった善導大師を右に、法然上人を左にお祀りします。
【動画】お仏壇の祀り方・お手入れの仕方
仏具は、お香を焚く香炉、ろうそくを灯す燭台、生花を生ける花立てがあり、これを三具足といい、燭台と花立てを各一対にすると五具足となります。お香は仏さまの「慈悲」 、花はその「広い心」 、灯明はその「智慧」の象徴としてささげるものですので、お仏壇にはこの三種類の仏具を揃えるようにしてください。
そして、ご本尊を隠さないように位牌を納めれば準備万端です。
自然とお念仏へ
勤行式の式次第のことを「差定」その差定を構成する一つひとつのお経を「偈文」といいます。次回から順にこの偈文を解説していきますが、一度おおまかな流れを説明しましょう。
まず身心を清めて、阿弥陀仏をはじめとした諸々の仏・菩薩をお迎えします。
次に、過去から造り続けてきた悪業を懺悔し、経典を読誦します。そして勤行のクライマックスともいえるお念仏をおとなえし、仏・菩薩をお見送りして勤行を終えます。
〝クライマックス〞としましたが、浄土宗の勤行式の要は念仏であることは間違いありません。またその他の偈文は念仏だけでは不十分として組み込まれているということではないのです。
法然上人は極楽往生への正しい修行法として「五種正行」を勧めています。それは読誦、観察、礼拝、称名、讃嘆供養の五つですが、自然にこれらが勤められるように構成され、そして最も高潮に達する所でお念仏へと誘ってくれる、これが日常勤行式なのです。
次回から偈文の解説ですが、知識だけではなく 〝行〞を通じたお念仏の心を感じていただければと思います。
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