浄土宗新聞

頼られる寺院を目指して 「ごはんの会」で地域の拠点に頼られる寺院を目指して 7月21日 滋賀・徳源寺

投稿日時
大人も子どもも餅つきに大はしゃぎ(中央でしゃがむのが綾瀬さん)

 滋賀県甲賀市の徳源寺(西山厚之住職)では、毎月1回の「ごはんの会」など、地域に密着する様々な取り組みを副住職の亮哲師(39)、夫人の綾瀬さん(40)を中心に家族総出で行っている。これは一般的な「子ども食堂」ではなく高齢者も中心になっての全世代横断型の企画。催しの日には過疎の山里に人々の歓声が沸き上がる。
 地区は市街地から車で数十分、旧信楽町の山間部で4集落合わせても100軒程度、小学校は児童わずか17人。亮哲師と2011年に結婚したのを機に同寺に入った綾瀬さんが、独居やUターン・Iターンの家族が多く、日中は高齢者や未就園児と母親の孤立が目立つ地域の状態を憂い、地域活性化の核として寺を誰でも来られ親しまれる場にすることを目指し、7年前から始めた。
 現在は、(公財)浄土宗ともいき財団の助成を受けており、カレーやバーベキューなどを寺族が調理し、本堂で振る舞う。高齢者を副住職が送迎、育児世代やその子どもを含め毎回数十人が集まり、受け付けから配膳、片付けなどは、週末に寺に戻る厚之住職(72)も一緒に参加する。
7月21日は恒例の野外餅つき大会に、子育て世代も含めた50人余りが詰めかけた。家族連れが山門前の石臼を囲み、綾瀬さんの掛け声でまず中年男性や副住職らが杵を振り下ろす。高齢の男性がコツを伝授し、子どもたちも大喜びで順に杵を手に。初老の女性が自慢の横笛で軽妙に伴奏し、村を挙げての祭のように全員で盛り上がる。つきたての餅を頬張りながら、そこら中に語らいの輪ができた。

揚げたての天ぷらを食べながら談笑する参加者


 
 地域のつながりが希薄になる中での交流によって、「引っ込み思案だった子らも仲良くなっています」と綾瀬さん。老人が〝柿の怒られない採り方〟を小学生に伝授すれば、幼児が「よそのおばあちゃん」に歌を聞かせることも。
 ごはんの会以外にも、見守りを兼ねた高齢者宅への弁当配食や多彩な寺子屋活動も続けており、人々が気兼ねなく相談事に訪れることも多くなった。「仏教とは人のためになることをすることですね」と副住職。
 「頼られる寺として役割を果たせている」と厚之住職が言うように、住民誰もがくつろぎ、つながりの中でそれぞれに輝いている。過疎でもここまでできるという寺の確実な存在感が感じられた。
(ジャーナリスト 北村敏泰)