浄土宗新聞

自身 振り返り 清々しい心で新年を

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木々の葉も落ちはじめ、日に日に寒さが身に染みる季節となりました。新年を迎えるための大掃除や年賀状などの年越しの準備で忙しくしている間に、気が付けば年の瀬です。
そんなこの時期に行われる代表的な仏教の行事に「仏名会」「御身拭い式」「除夜会」などがあります。
「仏名会」は、私たちがこの一年、知らず知らずの間に犯してしまった罪を仏さまの前で懺悔する法会で、過去・現在・未来の三世にわたって存在する諸仏の名をおとなえし礼拝を繰り返し行います。
「御身拭い式」は、ご本尊さまのお身体に積もった埃を払い清める法会で、埃を私たちの心の乱れや煩悩に見立て、それを拭い清めるという意味があります。
そして「除夜会」は、大晦日の夜から元旦にかけて行われる法会で、「古い年を取り除き、新年を迎える日(除日)の夜」であることからその名があります。一年間の自身の罪を懺悔し新年を迎えるという意味がこめられ、宗派を超えて多くの寺院で行われています。
「除夜」というと、「除夜の鐘」を思い浮かべる方も多いでしょう。
仏教では、貪(とん=貪り)・瞋(じん=いかり)・痴(ち=おろかさ)など、人間が持つ煩悩は、108種あると説かれます。除夜の鐘は、これら私たちの悩みや苦しみを引き起こす原因である煩悩を取り除こうと108回撞くのが一般的です。
「仏名会」「御身拭い式」「除夜会」、いずれの法会も自身の行ないを振り返り、心清らかに新たな年を迎えるための行事なのです。
浄土宗には「愚者の自覚」という考えがあります。法然上人は、比叡山で学問や修行に励まれていた時、「智恵第一の法然房」とたとえられるほど優秀でしたが、自らを「愚痴の法然房」と称されました。これは上人が、正面から自分を見つめ、深く内省された結果、吐露された言葉であり、自身の欠点やいたらなさに気づくことが大切であるということを示されています。
何かと忙しなく日々を送っている現代の私たちにとって、一旦立ち止まり、自身を見つめ直し、過去の行いを振り返るための機会はそう多くありません。
一年を締めくくり新しい年を迎える節目の月である12月は、そんな自身を見つめ直す法会が全国各地で行われます。
引き続き感染予防に配慮しながら、心機一転、清々しい気持ちで、ご参拝いただき、新たな年をお迎えください。

イラスト=きりたにかほり