それぞれの形で供養を お盆
7月または8月の13日から15日(16日)に、日本の各地で行われる「お盆」は、私たちにとってもっとも馴染みのある仏教行事の一つです。
その起源は、『盂蘭盆経』というお経に書かれたお釈迦さまの弟子・目連の逸話とされます。
―あるとき、亡き母親が、飢えと渇きに苦しむ餓鬼の世界に生まれ変わり、全身骨と皮になって痩せ衰え、みるからに哀れな姿となっていることを神通力(仏菩薩が具える人智を超越した能力)で知った目連。
驚き悲しんだ目連は、すぐにご飯を鉢に盛って神通力で供養しました。母親は喜んで食べようとしましたが、ご飯はたちまち火炎となって食べることができません。
目連は大声で泣き悲しみ、大切な母親を何としても救いたいとお釈迦さまに相談したところ、「7月15日、夏の修行を終えた僧侶に飲み物や食べ物を施せば、その功徳により母親は餓鬼の世界から救われるだろう」と言われました。目連がそのとおりに実践したところ、母親は餓鬼の苦しみから救われたと説かれています。
これが、ご先祖さまを供養する日本古来の信仰や儀礼と結びつき、ご先祖さまがこの世に帰ってくるという現在のお盆の原型となりました。
その後、この世に帰ってこられたご先祖さまの御霊を慰霊し供養する「盆踊り」、盆灯籠に火を灯して川や海に流し御霊をお見送りする「灯籠流し」など、お盆にまつわる行事が全国各地で行われるようになりました。
この盆踊りは、平安時代の僧・空也上人(903―972)や鎌倉時代の僧・一遍上人(1239―1289)によって広められた「念仏踊り」から出たといわれています。室町時代から江戸時代にかけて急速に全国に普及し、土地それぞれで工夫がこらされて催されるようになりました。
お寺の境内や広場の中央に櫓を設けて提灯を下げ、踊り唄やお囃子に合わせて老若男女が輪になって踊る輪踊りが一般的ですが、徳島県の「阿波踊り」のように練り歩く行列式のものや、「エイサー、エイサー」の掛け声が特徴的な沖縄県の「エイサー」など、いずれもご先祖さまに供養の思いを伝えてもてなすため、その土地の人々が各々の文化の中で形づくり、伝承してきました。それぞれの地域で形は違えど、先人を敬い後世に伝えることが大切にされてきました。
多人数で行事を催すことが難しい時世ですが、これらお盆の行事が開催される時には、十分な感染対策をしながら参加されてみてはいかがでしょうか。
またご家庭でも、今一度ご先祖さまを思い、まごころを込めてお念仏をおとなえください。