浄土宗新聞

介護者の共感とつながりを求め お寺おむつプロジェクト 大阪・安福寺

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高齢者らを介護する家で使わずに余った紙おむつを寺で集めて必要な家庭などに贈り、同時に“支え合いの心”を広めようという「お寺おむつプロジェクト」を大阪府柏原市の安福寺(=大﨑信人住職)が昨年秋よりスタートさせ、地域での協力の輪が広がりつつある。

きっかけは、肉親の介護をする人の集い「介護者カフェ」を大﨑住職が企画する中で、檀信徒の男性から「一周忌を迎えた母親の生前の介護用おむつがたくさん残っているので活用してほしい」と提案されたこと。男性の「もっと長生きしてくれると祈るような思いで用意していたが、どなたかの役に立てば」の言葉に、悲しみの中にも助け合いを忘れない温かい気持ちを未開封のおむつパックと共に受け取った。

大﨑住職は柏原市内のデイサービス施設に「お年寄りはお坊さんが好きなので、ぜひ法衣で来て」と乞われて月2回訪問する。住職が中心で法話や行事をするのではなく、入所者や職員と一緒に風船突きなどのゲームに興じることでリアルな福祉の現場を学び、コミュニケーションと支え合いを体感している。そこでも打診したところ、このおむつプロジェクトが歓迎され、開封したパックやサイズが不揃いでも入浴介助時の床の防水などにも活用できると分かった。

今年1月14日に開いたカフェでは、十数人の参加者が介護の悩みなどを話し合った。住職がプロジェクトを「気持ちを届けるのです」と紹介すると、初老の女性が早速、「うちに結構あります。シーツも使って」と提供を申し出た。

終了後には、アドバイザーとしてカフェに同席している柏原市の社会福祉協議会や地域包括支援センターの職員と住職の話し合いに。岡山宏志・同センター長が「おむつを媒介としてモノだけでなく精神的支援、人のつながりができるのが有意義。障がい者にもニーズがあり、市全体にどう広げるか、後方支援をしたい」と約束し、社協の相談窓口や市民が集う催しでカフェの紹介や呼びかけをすることになった。

今後は隔月に寺で開くカフェの場などでおむつの提供と贈与を呼びかけていくが、「単に品物を贈るのではなく、それを通じて人に寄り添う心を伝え、孤立しがちな介護者の共感とつながりを求め、仏さまの前で恩送りを広げていきたい」と住職は強調する。超高齢化や認知症の増加が進む中で「社会全体が共有すべき課題。他人事ではなく自分事だとしっかり発信を続け、活動を知ってもらえることが大事」とブログやSNSでの呼びかけもし、公的助成やクラウドファンディングによる購入も計画する。

(ジャーナリスト 北村敏泰)

寄贈されたおむつを前に社協関係者と協議する大﨑住職
介護者カフェで心身をほぐす体操を学ぶ参加者