令和8年5月
歌壇
大分 小林 繁
菜畑を白一色に覆いたる霜に抗する葉菜愛し
評
下句が上句を受けて葉菜への愛情を感じる。大切に育てた作者ならではの受け止めでしょう。
栃木 小峰新平
目で選び持って比べてラベル見て日付確かめ妻は買い取る
評
なかなかユニークな一首。このような場面をとらえて短歌にする作者の力量を思ってしまう。
青森 三浦とし子
夜の雪昼には解けて川の音大地潤おす流れとなれり
評
作者は青森に住み、都会では味わえないこの一首に感動する。この地方特有の作をどんどん作ってほしい。待っています。
徳島 横山順子
喜寿迎え無理せず動けるバトミントンスポーツウ ェア派手目を選ぶ
東京 蚫谷定幸
啓蟄に虫もこぞって出るだろう野良猫の背はぐんぐん伸びたり
埼玉 石村和子
祭壇に並ぶ桜に春を知る慕われし母を孫と見送る
京都 岡田直子
「おはよう」と雀が声をかけるごとそんな気がする彼岸の朝は
神奈川 小笠原嗣朗
己より深く読み込みわが歌を味わい下さる人と酌む酒
宮城 神尾三重子
後戻りしてはいけない茶の道もピアノもそうねまたご詠歌も
埼玉 川田芳章
「熱海」「錦」「義ノ」に「伯乃」「翠」など令和の力士「富士」の名多し
青森 中田瑞穂
ジャンパーを粋に着こなす若者の魚売る声弾みて 太し
青森 中田瑞穂
ジャンパーを粋に着こなす若者の魚売る声弾みて 太し
京都 観山ヒロクニ
啓蟄は名前ばかりのことなのか蟻とクモらの姿まだ見ぬ
長崎 吉田耕一
微力だがやりきる日々を積み重ね明日への夢に一歩前進
大阪 橘ミヨ子
結果待つ遠距離に住む娘居てゆったり過ごす事祈るばかりに
評
添削 二句「遠く離れる」三句「娘有り」を直す。
俳壇
滋賀 小早川悦子
ヒヤシンス咲かせ女性の歯医者さん
評
ヒヤシンスと女性歯科医との取り合わせが快い。この歯科医、信頼できる腕前だろう。
福岡 稲永順士
春雷やガトーショコラの濃き断面
評
この句も春雷とガトーショコラの取り合わせ。取り合わせの作る風景が何かを伝えます。この句の場合はよいことの予感でしょうか。
長野 出澤悦子
バレンタインチョコはブラック老二人
評
この句もまたチョコと老人の取り合わせです。この取り合わせからは老人夫婦の風格を感じます。取り合わせは俳句作りの基本です。
東京 伊藤 文
梗塞癒え春風浴びつ靴屋へと
大分 小俣千代美
春の城下牡蛎街道の幟かな
大分 小林客愁
薄氷に小石ころがしカーリング
神奈川 里中 信
早春や夕焼け空にわれひとり
滋賀 田中敏子
蕗味噌の味は母より姑に似て
大阪 原田勝広
雪催い一番乗りの投票所
神奈川 藤岡一彌
橋脚の落書アートや山笑ふ
和歌山 福井浄堂
春寒やおひとり様の早歩き
兵庫 堀毛美代子
涅槃西風スリッパ齧る猫のいて
静岡 太田輝彦
風花をひとひら包むたなごころ
神奈川 葛西 裕
春一番老人ばかりの地域バス
京都 神居義之
服思案三寒四温文庫本
東京 小室清恵
鳥が来てターザンとなる柳かな
青森 中田瑞穂
冴え返る明日を考えぬ人となり
京都 観山ヒロクニ
春愁の揺り椅子揺らしカプチーノ
大阪 山崎有夏
道端の小さき手袋片手だけ
山梨 山下ひろ子
黄昏や鳥の巣の枝そのままに
滋賀 山本祥三
四月二日生まれ死にではなくて世に出るだ
評
添削 原句は「生まれは死にでなく」だった。リズムを整えて主張を強めた。言葉遊びが楽しい。