令和8年6月

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歌壇
堀部知子 選 投歌総数84首

広島 山本玲子

大方は予定通りに過ぎたきと八十八の生日迎ふ

さりげなく詠み込みなすから、読み終えた後に作者の感慨がひろがりをみせる。

埼玉 山本 明

花なれば吹雪も楽し花びらの睫に落ちて君のほほえむ

この一首は下句が良いのでしょうね。桜の歌は多く詠まれているだけにむずかしい。

宮城 西川一近

この年も桜の前でにこやかにほほえむ母は九十七才

母上のご長寿に何よりのよろこびがこの一首からあふれる。この年の桜は格別であったでしょう。

奈良 中村宗一

上空にヘリコプターが飛ぶたびに防空壕から眺め た思い出

京都 観山哲州

句の恩師白寿まじかでお浄土へ秀句も多く心に残る

長崎 吉田耕一

老農の力が尽きた休耕地右も左も過疎地の田畑

大阪 林 孝夫

東京の娘に畑の野菜送る明日を楽しみに今夜は眠る

大阪 根来譲二

今年また川面をすべる花筏見送りをれば光なしゆく

青森 中田瑞穂

さまざまな書体の文字は美しく展示会場に集いて遊ぶ

京都 岡田直子

椀種は野菜たっぷり具だくさん家族の健康私の腕で

神奈川 小笠原嗣朗

伸び上がり水面に羽ばたく白鳥を見つつ朝餉を妻と摂る宿

栃木 小峰新平

開くたび参加者の減る同期会過去の写真と見比べてみる

滋賀 奥田壽英

やぶ椿川・池の側いきいきと春風のせて小鳥の唄が

アメリカ 生地公男

ドジャース色街はうららに開幕戦諸処に日本の野球士壁画す 

原句は「壁画す日本の野球士」だったが語順を入れ替えた。

俳壇
坪内稔典 選 投句総数273句

滋賀 のぐちなおこ

観音様一歩踏み出しちる桜

観音さまが落花のなかへ一歩踏み出し、花吹雪を浴びている。その動きに春の生動を感じる。観音さまのようすが絵になって目に浮かぶ。

兵庫 堀毛美代子

我に似て短足なりしチューリップ

チューリップを短足と見たその見方が愉快。言わ れてみればたしかにチューリップは短足だ。この見 方、笑いをもたらして読者の気分を明るくする。

東京 山崎洋子

本堂の椅子に忘れて春ショール

椅子に残されている春のショールから、読者はど んなことを読み取るだろうか。ボクは最近に相棒を 亡くした婦人の顔を思い浮かべた。

福岡 伊熊悦子

夕さりの桜吹雪をそぞろ行く

三重  稲垣三枝子

制服の裾上げほぐす春の宵

大分 小俣千代美

恙なし今年も花の桜坂 

大阪 津川トシノ

鯉幟老人家庭のベランダに 

大阪 原田勝広

御堂筋男の手にも春日傘

東京 松井なつめ

風光るランチに向かふ新社員

埼玉 山本 明

過去は無いほたりほたりと春の雪

大分 吉田伸子

春雨に庭の古椅子ぽつねんと

大分 吉田伸子

春雨に庭の古椅子ぽつねんと

神奈川 上田彩子

残雪の連山望むワイナリー

静岡 太田輝彦

花吹雪途中で下車し一人旅

京都 岡田直子

亀鳴くや飛びて戻らぬブーメラン

山口 沖村去水

春うらら腹から歩く妊婦かな

東京 小室清恵

まず皆でほうとう食むや雪解村

長野 出澤悦子

純毛の手編みセーター米寿です

青森 中田瑞穂

暗黙の内の了解春句会

奈良 中村宗一

住職に代わって尼僧春彼岸

京都 根来美知代

足首に梵字のタトウ夏帽子

三重 眞泉廣道

蓬の香お守りにしてるんるるん

滋賀 増田節子

孫だけで初訪問や春休み

京都 観山哲州

春の雷不条理のこと二つ三つ

滋賀 小早川悦子

蕾抱く父の形見の君子蘭

原句は「君子蘭父の形見や蕾抱く」だった。語順を変えて蕾の印象を強めた。