令和8年7月
歌壇
群馬 新井日出子
祖父と父村長務めし村役場写真飾られ若く凛しき
評
作者にとって大変誇らしい気分でしょうね。若い日の祖父と父上。それを一首に収め得た。
群馬 伊藤伊勢雄
ヘッドギア着けたる一群の高校生日本の将来君らが船長
評
なかなか微笑ましい一首。一群の高校生に託す作者の思いが伝わる。上句から下句への発想の転換が作者ならではの着想でしょう。
埼玉 川田芳章
通勤時満員電車のその中で器用に畳み新聞読む人
評
このような場面を一首になし得たことに拍手。通勤中にもニュースは欠かせないものなのでしょうね。
千葉 長田尚子
この寺を守りて亀はゆうるりと庫裏の日向に小松菜かじる
京都 林田麻裕
燕の子私には口開けないね黒いTシャツ着ているけれど
京都 観山ヒロクニ
失念も今となっては勲章か傷の悲しさ金に輝く
奈良 中谷理英子
本二冊と数珠を頂き同期らと学ぶ喜び五重相伝
大阪 津川トシノ
クレソンがびっしり生える池の端バスの窓から手を伸ばしたい
兵庫 堀毛美代子
開業医のタッチパネルの何回もタイミングのづれあとの人ごめん
富山 山澤美栄子
花まつり歌とお遊ぎに遠き日の境内に遊びし日々蘇る
青森 三浦とし子
北国に梅・桜・桃の咲き誇り地震の恐怖と共生を楽しむ
岩手 小野寺満
滅茶苦茶になるのも良かれとわが花壇植えっぱなしの多年草咲く
宮城 神尾三重子
風に揺れ雨に濡れても凛と立つ牡丹の花は優しき王者
滋賀 奥田壽英
風すがし青田に響く水の音豊かな実りに蛙の合唱
評
元歌の二句目「青田に光る」を「青田に響く」に直した。その場の情景が伝わってくると思う。
俳壇
福岡 伊熊悦子
亀鳴くや遺跡の多き町に住む
評
「亀鳴く」はフィクションの季語です。遺跡の多 い町では亀の鳴くことに真実味がありそう。
東京 小室清恵
農大の教師は多弁初桜
評
「亀鳴く」はフィクションの季語です。遺跡の多 い町では亀の鳴くことに真実味がありそう。
東京 小室清恵
農大の教師は多弁初桜
評
農業大学の教師だと無口、と思い込んでいたので すね。ところが、桜を前にしてしゃべること、しゃ べること。その驚きが初桜と同様に新鮮です。
京都 林田麻裕
全身で遊んだ後のゼリーかな
評
体もゼリー状態にほぐれているのでしょうね。ゼ リーが一番うまい状態かも。
佐賀 織田尚子
オスプレイ私の春空大破壊
京都 糟谷藍子
虹二重終の美学のスケーター
大阪 越野和美
つばめさん実家忘れたらあかんやん
滋賀 小早川悦子
煌きし放射の真中蜘蛛鎮座
神奈川 里中 信
提げた手に歪な苗木笑顔かな
大阪 津川トシノ
何もない床でつまずく梅雨の午後
大阪 西岡正春
青嵐小指の欠けし吽形像
奈良 南 宏子
青嵐小指の欠けし吽形像
東京 松井なつめ
柿若葉親指姫のすべり台
大阪 森 敏記
田植機の取っ手に袋パンふたつ
大分 吉田伸子
春の朝コナンのパズル完成し
大分 吉田伸子
春の朝コナンのパズル完成し
東京 蚫谷定幸
葉桜と人あまたなる武道館
福岡 稲永順士
ドローン翔ぶ空の高さの薄暑かな
長野 出澤悦子
桜咲く認知テストの猫、電車
京都 大八木純正
桃色のこの木何の木花水木
静岡 太田輝彦
菜種梅雨どれも故人と居る写真
山口 沖村去水
春愁や水平線を眺むれば
京都 神居義之
黄金の週か草引きでもするか
大阪 根来譲二
若葉寺十一面の仏かな
京都 根来美知代
三匹を数えて終り目高の子
京都 観山ヒロクニ
春の雷猫の肉球やわらかし
三重 稲垣三枝子
都忘れ義母から継いで仏壇に
評
添削 原句は「仏壇に義母から継ぎし都忘れ」。「都忘れ」を最初に置いて印象を強めた。語順を変えることは推敲の基本です。