令和8年8月
歌壇
岩手 小野寺満
「おじいちゃん抱っこ」の声に飽きたれば肩にぺたんと頬寄せ眠る
評
大変素直に詠まれていて、その場面の雰囲気が 直に伝わってくる。信頼関係までも
埼玉 川田芳章
人よりも七分早い新記録二足歩行のロボット走る
評
テレビでの観戦か、今どきの一首。「七分」早 いの数〇が入っただけに、リアリティをもたらす
奈良 永井初子
七年後娘は還暦われら米寿元気でありたし共に祝ぎたし
評
七年後が楽しみ。その願いがかないますよう に。共に、祝うその日までの一日一日が本当に貴重
青森 中田瑞穂
青空に眩しく映える水芭蕉キーンと雉の鳴き声聞 こえ
奈良 中村宗一
当麻寺の二十五菩薩の練り供養中将姫を先頭にして
大阪 林孝夫
娘に会うそれだけ目指し東京へ元気な姿に行って良かった
京都 林田麻裕
鴨の子に大きなカメラを向けている君の横顔心で 撮った
奈良 出口照子
つばめの巣指さす孫は年長さん帰ってきてねと三 年目の保育園
長崎 吉田耕一
空き箱に残ったカスにわが罪が燃え始めている今 日より禁煙
京都 根来美知代
老妻の半歩遅れて杣道を歩む番組夫の気に入り
群馬 長田靖代
川沿いにアカシアの花咲き満ちて流るる水に香も 漂ヘり
栃木 小峰新平
天窓に射す月光を見上げつつ背泳ぎをする梅雨の 間の夜
三重 奥田悦生
夏野菜豊かに育てと願う身に降り注ぎたる今朝の蝉しぐれ
評
結句「蝉しぐれかな」を「今朝の蝉しぐれ」に直した。
俳壇
兵庫 堀毛美代子
句の話尽きぬ人なりさくらんぼ
評
その人、サクランボを沢山食べたのだろうなあ。 いや、食べるのも忘れて話し続けた? どちらにし てもその場の楽しさを想像できます。
東京 山崎洋子
蜜豆やいつのまにやらお婆さん
評
この嘆息、分かるなあ。好きな物は変わらないの に、なぜか身体のさまはあっという間に変化します ね。ボクは「あんパンやいつのまにやらお爺さん」。
京都 林田麻裕
ラジオDJは跣のテンションで
評
「跣のテンション」という表現がラジオDJの生 き生きとした話しぶりを伝えます。
福岡 伊熊朋則
絵手紙にでかき苺や「摘みに来い」
奈良 出口照子
初採りの胡瓜糠漬け取り合いに
佐賀 織田尚子
夏わらび背丈そろえて道の駅
滋賀 小早川悦子
新じゃがのコロッケ孫はいくつでも
京都 孝橋正子
子やもりの足滑らせて落ちにけり
大阪 西岡正春
万緑の風に吹かれてボブ・ディラン
和歌山 福井浄堂
新茶酌む輪廻の話聞きながら
大阪 原田峰子
父の日やアディダスの靴鎮座する
石川 山畑洋二
半分は風呂に残して軒菖蒲
愛知 山崎圭子
菓子の銘二人静の夏点前
静岡 松永信介
この薬効くと云ふ女医立ち葵
三重 眞泉廣道
数独の紙を占拠す春の猫
大阪 高寺啓二
心地よい夏念仏の白昼夢
東京 小室清恵
よく来たと僧の笑顔や山若葉
京都 大八木純正
同窓と保津川下りアロハシャツ
静岡 太田輝彦
一人旅片道切符や夏の朝
神奈川 上田彩子
伸び過ぎの筍掘りも老人会
アメリカ 生地公男
マンザナー雪山守る慰霊塔
滋賀 田中敏子
百日紅戦争知らぬまま喜寿に
評
「喜寿となり」が原句でした。