令和8年9月
歌壇
京都 赤尾智子
異国へと旅立つ孫を案じてか幾度も尋ねるさびしげな祖父
評
詠われている場面が目に見えるようだ。「幾度も尋ねる」がそれを見事に表現している。
宮城 西川一近
休日の寺を手伝う孫見つけしばし社の由来を伝う
評
下句が一気に深みのある一首に成し得た。その由来を聞きお孫さんは更に考えを深めたでしょう。
岩手 小野寺満
合唱の余韻に浸る暇もなく人、人、人の東京駅に
評
せっかく合唱の感動が東京駅の人の多さにかき消されてしまうそのくやしさ! 納得です。
大分 小林 繁
啓蟄を迎え野菜の種を播く待ってましたと春雨の慈雨
三重 本城美喜子
車中にて音読するねと急に言うたまに会う孫は一年生
滋賀 北川徳子
八十を過ぎれば歳を言いたがるむずかしきかな女心は
宮崎 髙平確子
神宮の外苑創建百年の記念試合の交流戦観る
岩手 高橋 旦
鮮やかな四季を彩る緑色心に刻む田植えの苗も
青森 三浦とし子
半年で三回も来る大地震自然の力にあらがえず座す
青森 三浦とし子
半年で三回も来る大地震自然の力にあらがえず座す
アメリカ 生地公男
クローゼットの闇に避難し伏せる猫独立記念日の苦難の花火
山口 沖村宏明
運命は何故か私にやさしくて私は私と教えてくれる
京都 岡田直子
ワールドカップ小さな村も熱狂すわれは子育て多忙で楽し
埼玉 塚﨑孝蔵
孫曰くゲーム三昧怒るなら遊びに来ないとじいじをおどかす
群馬 長田靖代
春立ちて仏花に朝を迷いおり次から次へ咲き初めて嬉し
評
二句目「仏花に朝の」を「仏花に朝を」に、結句「咲き初めうれし」を「咲き初めて嬉し」に。
俳壇
福岡 伊熊朋則
先発は未だ無安打缶ビール
評
ビールがうまいと言わないで、とってもうまいと 感じさせるところがよい。球場でのナイターの観戦 か。もちろん、テレビの前の観戦でもよい。
兵庫 堀毛美代子
青竹も葉蘭も器夏料理
評
涼しくてうまそうな夏料理です。この句もうまい と直接に言わず、風景でうまさを伝えています。
東京 小室清恵
湖にちさき港や桐の花
評
句の風景から気持ちのよさを感じます。俳句では 作者の思いや気持ちを風景(イメージ)、リズムな どが伝えます。これ、句作りのポイントです。
三重 稲垣三枝子
亡き夫のプラモ走らす夏の旅
岩手 佐々木敦子
山開き中継放送ドローンにて
神奈川 里中 信
老夫婦朝練だけと手をつなぎ
神奈川 里中 信
老夫婦朝練だけと手をつなぎ
大阪 津川トシノ
ワッショショ聞こえるような蟻の列
大阪 森 敏記
納涼祭今年はフェスとカタカナに
京都 池内久勝
夏の朝アメリカンより香り立つ
福岡 稲永順士
素麵に絡む大葉の香りかな
京都 大八木純正
縁側に蚊取り線香三つ置く
山口 沖村去水
極楽は傍らにあり三尺寝
岩手 小野寺満
行列を離れたる蟻俺のやう
青森 中田瑞穂
寝転んでまた寝転んで夏座敷
奈良 中村宗一
衣替え早すぎ孫に笑われて
大阪 根来譲二
段畑は馬鈴薯の花天近し
京都 根来美知代
秋風も描く大極殿写生
石川 山畑洋二
胡瓜漬けせよとどっさり置きて去る
長崎 吉田耕一
慣れたねと父の便りの猛暑かな
東京 阿部悦子
軍艦のデッキを掠め夏燕
滋賀 田中敏子
盆踊り孫が着ている娘の浴衣
和歌山 福井浄堂
もこもこと山蟹わきし寺の溝
東京 山崎洋子
さくらんぼひょいと口にす九十歳
評
原句は「ひょいと頬張る」。「頬張る」は口いっぱいにすることだからこの句では不適切。「ひょいと」に合わせて直した。