令和3年8月

投稿日時

浄土歌壇
堀部知子 選
投歌総数126首

京都 根来美知代

丁寧に和菓子を包む店員の制服の白き衿の清しも 

京菓子でしょうか。作者の着眼は上句を受けて、自ずと清々しい気分になるのはその白き衿ゆえか。

栃木 小峰新平

田植する隣は麦を刈り始めそのまた隣は代掻きをする

作者の視線の変化に読者は想像をふくらませ、その景をつぎつぎに身内に取り込んでいく。

大阪 安藤知明

孫よりのメールはいつもコロナには負けないでねと結ばれており

この一首は結句の良さではないでしょうか。ある年齢に達したお孫さんとの交信がほほえましい。

兵庫 中西一朗

積もりたる枯葉を掃かんと早朝の墓苑に行けば箒の跡あり

群馬 新井日出子

コロナにて見舞う施設の面会で友の笑顔に逢える日を待つ

滋賀 中村ちゑ

家を守る子と語りつつ五歳にて逝きし長男を今に偲ぶも

福岡 上野 明

菜園にジャガ芋育ち収穫は三又鍬で茎枯れを待つ

大阪 津川トシノ

骨育にカカト落しが良いと聞く廊下の床がみしみしと鳴る

和歌山 原 鉄也

紀の国は山国なれば庭に来る尾長、山雀、目白に鶯

青森 中田瑞穂

車中にて問診を受け薬を待つケンタッキーチキンを買うようにして

大阪 林 孝夫

よーいどんのワクチン予約運を天に任すが電話もネットも駄目だ

奈良 中村宗一

救急車だけでは命を救えないドクターヘリの飛ばぬ日はなく

アメリカ 生地公男

鎌倉へやっと電話の繋がればワクチン終えしと疲れたる声

千葉 林 元子

肉ジャガを丼いっぱい盛りつけてコロナ禍のなかささやかな幸

石川 五十嵐一雄

半月の形に割れし皿のこと言いそびれつつ時の経にけり

下句は「隠してしましの休息時間」であった。

浄土俳壇
坪内稔典 選
投句総数224句

佐賀 織田尚子

梅雨となるおうち時間の裁縫箱

コロナは新しい言葉をもたらした。三密、テレワーク、オンライン飲み会など。「おうち時間」もその一つ。コロナ禍をささやかな福に転じた句。

大分 吉田伸子

五月雨やコロナの接種五秒程

コロナワクチンの接種は、その予約からして社会的な騒動になったが、意外にも接種は「五秒程」で済んだ。その気の抜けた感じのおかしさ、そして安心感! それをうまく詠んだ。

青森 中田瑞穂

ふるさとにマグロ幟よ青嵐

作者の故郷はマグロで有名な大間あたりなのだろうか。鯉幟ならぬマグロ幟が愉快だ。

京都 根来美知代

風薫る誤字そのままの拉麺屋

群馬 木村住子

蜜豆を亡母と分け合ふ午後三時

大阪 森 敏記

大鉢にそらまめの湯気大家族

京都 孝橋正子

母逝きて一人ぼっちの牡丹園

和歌山 福井浄堂

念佛の風に交じりて里若葉

滋賀 三宅俊子

青梅雨やほのかに匂ふ女子生徒

長崎 平田照子

夏つばめ帆船追いて宙返り

奈良 畷 崇子

たわいなき長電話する梅雨の入り

大阪 津川トシノ

傘をさし日影をつれて歩く午後

熊本 土佐千洋

離島への赴任の決り蚊帳用意

大阪 西岡正春

岩手山一本道に青田風

埼玉 須原慎子

「御自由に」との花菖蒲少しだけ

神奈川 藤岡一彌

花蜜柑見下ろし電車傾ぎゆく

山梨 山下ひろ子

蛍きて二人で生きて焼き団子

鳥取 徳永耕一

新緑は動き出す色旅心

神奈川 中村道子

青嵐誰かのボール転げゆく

群馬 飯塚 勝

雨の中重たく居ます薔薇を剪る

群馬 長 京子

ライン・ライン近況報せと柿若葉

神奈川 上田彩子

夏来ると軽い女となりて旅

大阪 岡崎 勲

観覧車先に乗り込む夏の蝶

アメリカ 生地公男

解放の口髭夏の風の悦

「風に」を「風の」とし風を主人公にした。