“奇跡の洞窟蔵”で育つ古くて新しい熟成酒 島崎酒造

日本酒は、しぼりたてがおいしいというイメージが強い。ところがどっこい、5年、10年、20年と熟成させた日本酒が、今ブームを起こしている。
興味津々で訪れたのは、看板酒「東力士」で知られ、洞窟熟成酒で注目されている、栃木県那須烏山市の「島崎酒造」社長の島崎健一さんが案内してくれた。
「洞窟で熟成させた『熟露枯』の1年ものと10年ものを飲んでみてください」1年ものをいただくと、フルーティーでふくよかなうまみでとても飲みやすい。
10年ものはとろりとしていて、はちみつのような甘い香りがふわり。まろやかなうまみがスッと染み渡り、余韻を残しながらふっと消える。濃厚。しかし、繊細で心地よい。
「近くに戦車工場として掘られた洞窟があって、そこがうちの蔵。日本酒を貯蔵、熟成させているんです」
洞窟は天然の保管庫。太陽光が入らないから品質を保ちやすく、平均温度は10度前後で、冬は5度、夏は15度になる。この自然の〝ゆらぎ〟が、貯蔵、熟成にいい影響を与えるのだという。
聞けば、この洞窟は、島崎さんのお父さんが中学生のころに掘削作業に携わった場所なのだそう。「父の思い出の洞窟が貯蔵、熟成を助けてくれる。こんなに恵まれた環境で酒造りができるのは奇跡のようなことです」と島崎さん。
島崎酒造の熟成酒「熟露枯」は、ウイスキー、ワインなど、熟成文化が根付くヨーロッパの品評会でも評価されてきた経歴がある。これは、日本酒に新たな可能性があることの証だ。
「熟成酒はすぐに結果が出るわけではないので、目指すお酒から逆算して作業を繰り返します。難しいけど面白い。これが醍醐味。ロマンです」
島崎さんのチャレンジは続く。3人の子どもたちも、醸造に興味を持っているというから、10年後、20年後の島崎酒造も楽しみだ。
(フードライター:藤岡操)
