浄土宗新聞

【浄土宗の読む法話】きっと護っていてくれる

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立春とは名ばかりの寒さですが、寒風の中梅の蕾は次々と華麗に開いて、わたし達の心を温めてくれています。大自然の営みを感じます。

一昨年12月に故人となられたSさん、昭和49年にご主人を41歳の若さで亡くされ、女手1つで娘さん1人を育てられました。お寺の行事にもその地区の当番に当たられた時には快くお引き受け下され、お勝手の手伝いなどご奉仕して貰いました。持ち前の明るさ、気さくさで誰とでもお喋りをし、周りを和ませて下さいました。ある時Sさんが私に「和尚さん、私は旦那を若くして亡くしたけど少しも寂しくないですよ。だってこんな良い娘を残していってくれたから。それに、こうして拝んでいるとどこかで見守って居てくれる気がするのです。だから、少しも寂しくありませんよ。」と仰いました。そんなSさんだから、お家にて娘さんとお話しながら息を引き取られたそうです。少しも苦しまずに、大往生です。

娘さんも中陰中には親戚の方々と共に、真剣になってお経を、お念仏を、お唱えなされました。
私は、「その声を必ず阿弥陀様がお聴き取り下され、お母様はお父様の待つ極楽浄土にお迎えいただかれます。お念仏すれば多くの仏、菩薩、先にこの世を去られた方々が、あなたやご縁のある方々を護り、お浄土に導くハタラキをしていて下さいます。ですから、お母様が生前に『亡くなった旦那が見守って居てくれる気がする』と言われましたが、〈気〉ではなく間違いない事なのです。」と、一周忌の時に娘さんにお伝えしました。

娘さんは「2人きりの家族でしたので母が亡くなった事は寂しいけれど、母がそういう思いで居てくれた気持ちを大切にしたい。私のことも両親が見守っていてくれるのですね。」と、言って下さいました。

【阿弥陀仏の本願を深く信じ、念仏して往生を願う人は、現世において不当なわずらいもなく、平穏無事に過ごすことができ、又、命の終わる時には極楽世界へお迎え下さるのです】との、法然上人【仏神擁護(ぶっしんおうご)】のみ教えがあります。
お念仏暮らしの中に多くのお護りを頂ける喜びを大切にし、お念仏を申しましょう。

合掌

三河教区 岡北組 長壽寺 神谷真章