浄土宗新聞

【浄土宗の読む法話】法然上人は仏教徒のノーベル賞

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2016年12月、新聞やテレビでは『2016年度ノーベル賞授与式』の話題で賑わいました。

大隅良典さんが、『ノーベル生理学・医学賞』を受賞され、式典に臨まれる姿に日本国民は大きな喜びを頂きました。
今、日本の男の子達が「大人になったらなりたいもの」の第二位に『学者・博士』と答えると言うのも、これまでノーベル賞を受賞された方々をはじめ、それを支えられた多くの学者達の絶え間ない努力の賜物と言えるでしょう。

2010年には、私の住む北海道の鈴木章さんが『ノーベル化学賞』を受賞されました。
これまで多くの化学者の方々が取り組んできた「クロスカップリング」と言う研究に取り組まれ、医薬品をはじめ多くの事に利用される道を広げてこられた方でした。
「クロスカップリング」とはそれぞれに異なる物質(有機化合物)その二つの物質をお互いそのままの状態で繋ぎ合わせる事だそうです。
しかしそれが大変難しく、一方が繋がるともう一方の何かが欠けてしまう、その繰り返しだったそうです。
そしてご苦労にご苦労を重ね、ついに「パラジウム」と言うものを使って二つの物質を完璧な状態で繋ぎ合わせる事に成功されました。又、その「パラジウム」は何度でも使い回しができると言う事も解明されました。
私はこの事をお聞きした時、すぐに法然上人のことが頭に浮かんでまいりました。
法然上人が浄土宗をお開き下さいます以前の仏教は、いわゆる「出家」の仏教が主流でした。
仏門に入り、厳しい修行と難しい学問を学び、戒律を守り「覚り」を目指すと言うものが根本とされておりました。それはごくごく一部の者しか勤める事ができない事であり、さらに「覚り」を得るのは至難の業でありました。

法然上人は「すべての者を覚りへと導く御教えを説かれたお方がお釈迦様である。」と深く信じ、その道を求められました。実に三十有余年に及ぶ求道の末に、「すべての者が救われる方法」をお釈迦様の御教えの中から見つけ出されたのであります。
阿弥陀仏は「全ての者を救いたい」との願いを起こされ、長い間大変な修行を積まれ仏様になられたお方であります。その阿弥陀仏の「全ての者を救いたい」という、願いの力を信じて、その名前をお呼びする。「南無阿弥陀仏」とお称えする事こそ、私たちが『覚り』に到達する唯一の方法であるとの御教えを、法然上人は発見されたのであります。

阿弥陀様は『覚り』を得るための世界『西方極楽浄土』をおつくり下さって、私の名前を呼ぶものを全て救い取ると誓われて佛様になられたお方なのであります。
法然上人がこの『阿弥陀様の御誓い』にお気づき下さって「南無阿弥陀仏」のお念仏を選び取ってくださり「日々の生活に追われる私達」と「仏の世界・覚りの世界」が初めて繋がったのです。

 『誓願に 南無阿弥陀仏と言う人を   救い取らずば 弥陀と名のらじ』

法然上人がお示し下さった「南無阿弥陀仏」のお念仏は私達と御仏様という、到底繋がりようのない二つを「お念仏」によって完璧に繋ぎ合わせてくださったのです。
そう考えましたなら、法然上人は私達仏教徒の『ノーベル賞』受賞者だと言っても過言ではないと思うのであります。
合掌

北海道第二教区 北組 慈教寺 嶋中三雄