浄土宗新聞

過去の戦争協力を知り平和を考える契機に「戦時資料」報告書 完成

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12日の記者会見の様子。左より廣瀬理事長、川中会長、大谷委員長

 法然上人のみ教えをもとに『世界平和への貢献』を課題に活動する浄土宗平和協会(廣瀬卓爾理事長)が日中戦争や太平洋戦争での教団の戦争協力をまとめた『浄土宗「戦時資料」に関する報告書』を完成させた。 これは、浄土宗総合研究所で平成18年度に始まった「浄土宗近現代史の総合研究プロジェクト」、同25年度に「浄土宗関連資料の整理研究班」が中心となって資料の収集と整理を行いまとめた「戦時を中心とした時局教化資料」(『教化研究』19号、2008年)などの成果を同協会が継承し総括を加えたもの。
 作成にあたっては、戦時中の浄土宗の歴史検証の作業に取り組むため、令和元年11月、宗教社会学を専攻する佛教大学の大谷栄一教授を委員長に浄土宗「戦時資料」に関する委員会を立ち上げた。
 委員会では、研究所が収集した資料を受け継ぐだけでなく、令和3年に、浄土宗が発行する機関誌『宗報』を通じ、宗内の全寺院に対して所有する戦時資料の提供を呼び掛け、戦時中の生活の様子を伝えるものや、軍隊・軍事に関するものなどの資料や情報を集めた。これらの資料や、戦時中の『宗報』、宗派の伝道教化資料などを分析・検証し報告書にまとめ、今年の3月31日に完成となった。

5日の贈呈式。大谷委員長(左)から川中総長(右)に報告書が手渡された

 7月5日に贈呈式、12日に完成記者会見をそれぞれ浄土宗宗務庁(京都市東山区)で行い、記者会見では、同協会の川中光敎会長(浄土宗宗務総長)、廣瀬理事長、大谷委員長が、発行の経緯と意図を説明した。
 廣瀬理事長は「過去に浄土宗は、戦時資料を学術的に分析していたが、総括ができていなかった。宗内の僧侶が過去を顧みて、これからの社会にどう活かすか、何が課題なのかを知るきかっけになれば」と報告書作成の意図を語り、川中会長は「戦争を知る僧侶が少なくなってきた現在、この報告書から過去の歴史を知ってもらい、これからの平和を考える契機にしてほしい」と語った。
 また大谷委員長は報告書の要旨説明で、戦時資料を基に宗派の戦時体制や布教活動について分析したところ、天皇を阿弥陀仏と同一であるかのように示す教説によって、浄土宗が戦争協力を進めていたことが確認できたとした。
 今後、報告書は、同協会会員に配布された後、チラシなどで全寺院に希望を募り、配布していくという。