浄土宗新聞

東大寺に響く報恩の念仏 浄土宗開宗850年お待ち受け法要 厳修 6月25日 奈良・興善寺

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お待ち受け法要の様子。中央宮殿の中には「法然上人御影」が安置されている

 奈良市にある興善寺(森田康友住職)が6月25日、「浄土宗開宗850年お待ち受け法要」を華厳宗大本山東大寺の指図堂で営んだ。
 指図堂は、法然上人とゆかりの深い遺跡寺院で構成される「法然上人二十五霊場」の第十一番。平家の焼打ちにあった東大寺復興にあたり、大仏殿の設計図を納めたことが名前の由来となっている。
 この復興の際に中心的な人物であった俊乗坊重源(1121‐1206)は、念仏者として知られ、法然上人とも念仏信仰を通じて交流があり、その縁で上人は復興中の東大寺で浄土宗の教えを説いたこともあった。
 このようなつながりから、後世、指図堂には法然上人の御影が祀られるようになり、法然上人二十五霊場の一つに定められている。
 興善寺は指図堂の護持を担ってきた奈良市内の浄土宗関係寺院の一つ。令和5年に同堂の修理が完了したことから、森田住職は、その落慶の慶賀とあわせて令和6年に迎える浄土宗開宗850年のお待ち受け法要を営むことを発願。東大寺の協力を得て実現に至った。
 当日は森田住職を導師に、関係寺院、檀信徒ら約100名が参列。雅楽の厳かな調べの中、指図堂に入堂、恭しく法要を開式した。森田住職は表白(法要の趣旨を述べる文)で、開宗850年を迎えることを慶祝するとともに、法然上人が示されたお念仏の教えが850年を経ても輝き続けていることを讃え、またこれからも、多くの方にひろがっていくことを願った。
 法要中、『観無量寿経疏』にある「一心専念の文(開宗の文)」が読み上げられ、参列者は、法然上人の遺徳に想いを巡らせながら、お念仏をとなえ、堂内にその声が響きわたった。

勧進所で営まれた別時念仏。堂内は絶え間なくお念仏が響き渡った


 指図堂に隣接する、重源上人が中国から持ち帰った唐代の高僧である善導大師の作と伝わる五劫思惟阿弥陀如来像を本尊とする勧進所阿弥陀堂では、奈良教区浄土宗青年会による別時念仏会も営まれた。
 森田住職は、法要後に「法然上人二十五霊場という遺跡で慶讃法要を勤められたことはこの上なく光栄でした。今回の法要が、他宗にもある上人の遺跡を知ってもらう機会になれば嬉しい」と、その喜びを語った。