浄土宗新聞

当時の様子を表す貴重な発見「富士講の大絵馬」を修復 静岡・宗心寺

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修復された絵馬。1776年(江戸時代後期)作。横197センチメートル、縦109センチメートル

 静岡県富士宮市の宗心寺(川島一通住職)が、同寺所蔵の「富士講の大絵馬」を修繕し、地域の話題となっている。
 同寺は同地域の35カ寺を巡る富士横道観音霊場第一番で、富士講とは江戸期から昭和初期にかけて流行した富士山を信仰する庶民信仰。この絵馬は同寺本堂に飾られてきたが、経年劣化やチリの付着などにより、何が描かれていたのか分からない状態だった。2013年に、富士山が世界遺産に登録されたことを契機に、川島住職は修復を決意。

赤外線写真の様子。登場する人物や風景、文字などが鮮明に映しだされている


 修復を専門とする仏具店の村松辰芳氏や、村松氏から紹介を受けた、フランスの画家・モネの作品などの修復を手掛けた東京藝術大学・木島隆康名誉教授が監修。特殊な薬剤を塗り、チリを浮かせる方法で洗浄し、赤外線写真で、描かれている人物や建物をあらかじめ確認しながら、約6カ月かけ、丁寧に作業を行った。
 川島住職は「郷土史の先生方によると、他にも富士講の史料は残るものの、当時の様子を描いた絵は珍しく、史料として希少とのこと。地域の貴重な財産なので市とも協議しながら公開も考えています」と話す。