浄土宗新聞

寺院がいのちを紡ぐ拠り所に 東西で生活困窮者のための墓碑完成 大阪・大蓮寺 東京・光照院

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墓碑前での法要で焼香するビッグイシュー関係者ら

 路上生活者らに雑誌販売を委託して自立支援する団体「ビッグイシュー(BI)日本」との協力で、大阪市の大蓮寺と東京都の光照院に、生活困窮者のための墓碑が完成し、10月11日に建碑式などが両寺で行われた。社会的に重要な貧困問題で死後の弔いをも視野に入れた取り組みだ。
 イギリス発祥のBIとは、同名の社会評論誌(450円)をホームレス状態の人が繁華街などの路上で販売し、売り上げの半分が販売員の収入になり生活再建につなげるシステム。国内では発足から20年を迎え多くの生活困窮者自立を実現、現在も百人近くが全国で販売活動をしている。しかし、その多くが身寄りのない高齢者で、亡くなっても「無縁仏」になるケースが相次ぐため、弔いの場が求められていた。
 創刊者の佐野章二BI日本代表らが大蓮寺の秋田光彦前住職に相談、寺が境内墓地に用地を永代に提供し、碑はBI側が建立した。1㍍四方、高さ1・5㍍の桜御影石の立派な碑には「友よ やすらかに」の銘が刻まれ、下部には遺骨が百体収納できる合葬墓。葬儀や供養の希望があれば同寺の僧侶が勤める。式では佐野代表や在阪の販売員十数人が参列し秋田前住職らが読経、序幕の後にしめやかに焼香した。

建碑記念のトークで話し合う秋田前住職(左)と参加者


 続いて開いた記念のトーク会では、秋田前住職が「家族の形の変化とともに葬送も変わっている。BIさんからの縁を大事に、墓だけでなく広く末永く関わらせていただき、何かあればここに寺があると思い起こして皆さんのいのちを紡ぐ拠り所にしてもらいたい」と挨拶した。
 都内で路上生活者に食事配布などの活動を15年前から続ける光照院の吉水岳彦住職もWEBで参加し、「いのちの最後の行き先としてお墓は大事。別れて終わりではなく、関わった人たちのいのちとふれ合っていく場です」と強調した。
 佐野代表は「弔いをオープンにすることで死後の拠り所となる。BI関係者に限らず希望する人には誰でも入ってもらえれば」と話し、事故による負傷で野宿状態になった50代の販売員は「BIの仲間と助け合って生きてきた。墓には抵抗があったが、ここで碑を見て人々のつながりの力をとても感じた」と語った。他の販売員たちからも一様に喜びの声が相次いだ。今後の定着が期待される。
(ジャーナリスト 北村敏泰)