浄土宗新聞

浄土門主 総本山知恩院門跡 伊藤唯眞猊下 年頭ご挨拶

投稿日時

年 頭 に 思 う

 私どもが人々の平安を祈る偈文に「祝聖文」があります。『無量寿経』巻下に出ます。「天下和順」(国中すべてのものが和らぎ)「日月清明」(日や月が大空に輝き)「風雨以時」(時に応じて雨が降り、風が吹き)「災厲不起」(災害や疫病が発生せず)「国豊民安」(国や民は豊かにまた安らかに)「兵戈無用」(武器を行使せずに戦うことなく)「崇徳興仁」(人々は徳を崇め、仁を興し)「務修禮譲」(礼儀と謙譲の道にいそしむ)の八句です。この偈文から、私たちは反省しなければならないことが多いです。「兵戈無用」について考えますと、世界は国際紛争が絶えず、化学兵器の増産に向かい、原爆の存廃にも意見が対立しています。
 法然上人も『逆修説法』の中で「衆生の宝にも命を持って第一の宝とす」と命の大切さを言及されていますように、命の重さを考えねばなりません。それ故、「兵戈無用」は平和問題と直結しています。「日月清明」を希求する地球人が、人類、動・植物など、全生命を絶滅させてしまいかねない、現代の科学が到達した「兵戈」の使用で、自らの星を潰滅してよいものでしょうか。武器は人間が創ったものですから、自らの手で「兵戈無用」が実現できると信じています。

浄土門主総本山知恩院門跡 伊藤唯眞猊下
浄土門主総本山知恩院門跡
伊藤唯眞猊下(いとうゆいしんげいか)