浄土宗新聞

災害時に宗内の人材活用を 「浄土宗災害支援ネットワーク」構築を目指す 福島・阿弥陀寺

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1月1日に発生した能登半島地震。不安な状況の中、いまだ多くの人が不自由な避難生活を強いられている。東日本大震災などでの被災者支援の豊富な経験を基に、今後の災害への対応、防災のために活動できる僧侶らの養成を続け、「浄土宗災害支援ネットワーク」の構築を目指す福島県いわき市の阿弥陀寺・馬目一浩副住職(51)に、今までの活動の中で感じたことや、災害時に寺院ができる役割などのお話を伺った。

台風災害を受けて開かれた災害支援ネットワークIwakiの会議(同ネット提供:左の議長席が馬目副住職)

 地元いわきは2011年の震災と原発事故で大きな被害を受け、阿弥陀寺の檀信徒も犠牲になった。馬目副住職は直後から支援活動に入り、7月からは避難所や仮設住宅での訪問傾聴サロン「浜〇かふぇ」を仲間の僧侶と開設。18年3月まで多い時には月10回程度開き、その後も要請に応じて続ける。また原発事故の影響に怯える子どもたちを支えるため、京都の総本山知恩院や長野の善光寺などへの保養ツアー「ふくしまっ子Smileキャンプ」を7年間実施した。
 並行して19年の台風19号被害を機に、地元NPOや社会福祉協議会、各種団体と連携して情報共有と防災対応を充実するために「災害支援ネットワークIwaki」を組織。馬目副住職は会長として定期的な研修、訓練などをリードする。
 「経験の積み重ねと、幅広い連携・協力、そして万全の準備がカギ」。
 馬目副住職はこのような取り組みの延長として浄土宗内の人材育成も行う。従来の教訓を基に宗門の大きな組織力と潜在力を災害対応に生かすのが狙いだ。浄土宗ともいき財団の助成も受け、まずは「災害支援アドバイザー」となる僧侶を増やすことに取り組む。平時には各地の有志の僧侶らと研究会や情報交換を実施しており、防災専門家を講師に研修会も開いた。
 協力し合っているメンバーが自坊で防災備蓄を進めたり、実際の災害時にも即応。1月の能登地震では、連携網を活用して寺院の被災状況把握と正確な情報の収集に努めた。積み重ねてきた経験を活かして自身の出動も含めて適切な支援に繋げるとともに、現地で活動する個人や団体にアドバイスをした。

防災の重要性を説く馬目副住職


 馬目副住職は「支援の中心的役割を果たすのはその地の被災者であることが多く、それは大きな負担なので、外部からの迅速なサポートが不可欠」と指摘。現メンバーを核に、当初は30人規模の個人単位のネットワークとして立ち上げ、宗全体に定着させていきたい考えだ。「過去の災害でも寺は地域のランドマークとして避難所にもなり、傾聴などで僧侶への期待がある。私たちには大きな役割があります」と強調する。
(ジャーナリスト 北村敏泰)