浄土宗新聞

気軽に行ける寺院を目指して 大変なときこそ門戸を開く

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自粛生活を余儀なくされた新型コロナウイルス感染症のまん延からすでに1年以上。外出をすることもどこかはばかられる今こそ門戸を開くべきと、工夫を凝らし活動する寺院を取材した。

寺ピアノで心ゆたかに 滋賀・西方寺

本堂前でピアノを演奏する牧副住職。「ともいきピアノ」は日中だれでも弾くことができる(雨天時、本堂内で行事があるときは不可)
本堂前でピアノを演奏する牧副住職。「ともいきピアノ」は日中だれでも弾くことができる(雨天時、本堂内で行事があるときは不可)

滋賀県草津市の西方寺(牧達玄住職)では、境内にピアノが置かれ、訪れた参拝者が自由に音色を奏でている。
住宅の多い地域にたつ同寺は、以前から数珠づくり体験やボーイスカウト、30店舗以上が出店するマルシェなど、さまざまな活動を行い、地域のコミュニティーの場として親しまれていたが、新型コロナウイルスの影響により多くの活動が中止や縮小となった。
この状況を受け、同寺副住職の牧哲玄師が「三密を避けて、できることは何か」を思案。音楽好きである牧副住職は駅や公共施設に設置され、話題になっているストリートピアノに着目、今年2月に本堂軒下にピアノを置いた。草津市内でのストリートピアノ設置は同寺が初。
「ともいきピアノ」と名付けた同寺のピアノは、口コミや全国のストリートピアノ情報を集めたサイトで広がり、地域の親子連れや学生だけでなく、県外からも演奏しに訪れる人がいるという。音色は境内に響きわたり、それを聞いて立ち寄る人も多い。
牧副住職は「対面に限らず、さまざまな人と接する機会を増やしたい」と、自身が演奏する様子をユーチューブで配信するなど、多角的な視点で活動している。

密を避け寺院参拝 東京・功徳林寺

門前には日本語、英語での寺院案内のほか、QRコードを掲示している
門前には日本語、英語での寺院案内のほか、QRコードを掲示している

東京の下町情緒が色濃く残り、コロナ以前は外国人をはじめ多くの観光客で賑わった谷中、根津、千駄木地域の「谷根千」エリア。その一角にある功徳林寺(新谷仁海住職)では、同寺を紹介する動画をユーチューブで公開している。門前にはQRコードを掲出し、密を避けて気軽に同寺の詳細がわかると話題を集めている。
この映像は、すべての参拝者に同寺の歴史を説明したり、本堂内をゆっくり見学してもらうことが難しいと感じたことがきっかけで、制作したもの。ドローンで撮影を行い、伽藍や阿弥陀如来像を本尊に祀る本堂、境内にある江戸三美人の一人・お仙ゆかりの笠森稲荷堂など紹介している。
新谷住職は「密を避けるために外出を控えている方も、気軽に立ち寄っていただければ」と話す。
コロナ収束後、再び観光客が訪れてくれることを願い、ナレーションの多言語化も予定している。

自宅で落ち着く時間を 山形・浄土院

コロナ禍で行事が中止や縮小となり、人々が寺院を訪れる機会が少なくなる中、山形市にある浄土院(日野崇雄住職)には、自宅で書いた写経を奉納するため多くの人が訪れている。
同寺では例年定期的に写経会を開催し、多くの人が参加していたが、感染症対策のため中止を余儀なくされた。自粛が続くなかで、心を落ち着ける時間をつくってほしいと考えた日野住職は、自宅でできるように同寺のホームページにダウンロード可能な写経を掲載。同寺に参詣する奉納希望者には、写経した経典の意味を日野住職が説明し、共に念仏をとなえたのちに写経塔へ納めている。
定期的に奉納する人は、写経が日課になり、同寺に持っていくのを楽しみにしているという。
日野住職は「こんなときこそ、門戸を開くべき。奉納することがお寺に行く目的となれば」と語った。