浄土宗新聞

気持ちを込めてご供養 お盆

京都の夏の風物詩、五山送り火。送り火は保存会に属する地域住民が共同で行い、その信仰を受け継いでいる めがねトンボ/ PIXTA(ピクスタ)

京都の夏の風物詩、五山送り火。送り火は保存会に属する地域住民が共同で行い、その信仰を受け継いでいる めがねトンボ/ PIXTA(ピクスタ)

全国的に7月から8月にかけて営まれるお盆。
この時期に営まれる行事の一つで、「大文字」の名で知られる京都の「五山送り火」。これはこの世に戻ってきたご先祖さまをお送りするために行う「送り火」の一種とされ、日本の夏の風物詩として古くから親しまれています。
このように、私たちにとってなじみ深いお盆ですが、その由来は、『盂蘭盆経』というお経にある次のようなエピソードとされます。

——あるとき、お釈迦さまの弟子・目連尊者は、自分の母親が飢渇に苦しむ餓鬼の世界に生まれ変わってしまっていることを知ります。大切な母親を何とか救いたいとお釈迦さまに相談したところ、「7月15日、夏の修行を終えた僧侶に施しをすれば、その功徳によってあなたの母親は救われるであろう」とおっしゃられました。目連尊者がその通りにすると母親は苦しみから救われたと伝わります。これが日本で祖先を供養する行事と結びつき、現在の先祖の霊を迎えるというお盆の形になっていったといわれます。
五山送り火の他にも、お祭りとして行われることの多い「盆踊り」は、本来は亡くなった方の霊を歓待して送るため、また川に灯籠を流す「灯籠流し」は、亡くなった方の霊をお送りするための行事です。
なかなか意識しづらいかもしれませんが、伝統的なお盆の行事の多くは、今は亡き大切な方々を迎え、お送りする「作法」といえます。それが今日まで続いているのは、亡くなった方への気持ちを行動に表したいという心が変わらずに続いているからではないでしょうか。
昨年、コロナ禍のなかで、(公財)全日本仏教会が実施した調査では、「お盆にお経をあげてもらった」という人が、例年に比べ半数以下の約20%にとどまったのに対して、全体でおよそ26%、菩提寺のある方に限れば、およそ37%の人が、「お経をあげてもらいたい」と回答したそうです。コロナ禍によって、生活が変化していくといわれる昨今においても、先祖を供養し弔いたいという気持ちが根強くあるということがわかります。
多人数で行事を営むことは難しい時世ですが、お迎えの場である精霊棚(しょうりょうだな)を設け、ご供養のためにお念仏をおとなえするなど一人ひとりができることもあります。
お盆の季節、今一度亡き方のことを想い、それぞれ精一杯、気持ちを込めてご供養いたしましょう。