浄土宗新聞

世代をつなぐ交流の場を 「なごみカフェ」・「絵本読み聞かせ教室」 岩手 大念寺

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東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県大槌町で、町の復興を支えようと同町大念寺の大萱生修明(おおがゆうしゅうめい)住職(63) と寺庭婦人の都(みやこ)さん(61) 夫妻が、世代を限らず誰でも利用できる食堂「なごみカフェ」や図書活動など様々な取り組みで頑張っている。
(ジ ャ ー ナリ ス ト北村敏泰)

住民で賑わう「なごみカフェ」。手前の作務衣姿が、大萱生住職
住民で賑わう「なごみカフェ」。手前の作務衣姿が、大萱生住職


カフェは、月1回土曜日に町民交流施設「おしゃっち」で開く。放課後に居場所がない子どもらを励まそうと2019年に夕食提供からスタートし、幅広い層が参加できるようにと昼の「食堂」にした。調理は都さんを代表とする婦人グループ「月あかりの会」の会員が担当し、住職が食材・調理器具運びなどでバックアップ。
メニューは唐揚げやハンバーグなど豊富で、資金は福祉団体などの援助もあるが、寺の持ち出しも多い。
活動の背景には震災で死者・行方不明者が1286人と町民の1割にも上ったという事情がある。
町並みは壊滅し、大念寺の檀家も200人以上が犠牲になった。家や職を失って生活に困窮し、共働きで子育てに余裕がない家庭が増え、さらに若い世代が町外に転出、残された高齢者は住み慣れない復興公営住宅に独り暮らしのケースも目立つ。その中で「何とか皆さんの心の復興を支えたくて」と住職。
6月開催日の18日は、都さんらは朝から厨房でカレーと野菜サラダを調理。会員の多くが独り暮らしの70代で、コンロの大なべを前に「そろそろルーを入れて」などと賑やかに談笑し、この準備作業自体が楽しい ″寄り合い〟だ。
昼前には、テーブルを並べたホールに女子中学生、中年夫婦やお年寄り仲間など次々に住民が集まり、受け付けや配食に大忙し。多くが顔見知りで、住職もテーブルを見回り、 「最近どう?」と世間話に花が咲く。互いに近況を伝えあう人たちもおり、文字通り地域住民の交流の場となっている。

大念寺広間では子どもらが絵本読み聞かせの練習を
大念寺広間では子どもらが絵本読み聞かせの練習を


引き続き午後は寺で「絵本読み聞かせ教室」 。都さんが大きな絵本を開き、小学生たちが文や台詞を交互に読み上げる。震災前に始めてから長く続けており、町内のイベント出場に向けてどの子も目を輝かせる。広間にはいくつもの書架に、多彩なジャンルの本が1万冊以上ぎっしり。震災後に、ここで学校も家もなくなった子らのために「復興寺子屋」も開いてきた。
震災で様々な支援活動に尽力してきたことが ″原点〟の夫妻は、今、子どもたちの育成に特に力を入れる。住職は町立小中一貫校・大槌学園の運営協議会長として町の教育も支援する。
大萱生住職は、 「これからの町を作るためにはあらゆる世代がつながらないと。その中でも、子どもは将来を担う大事な宝ですから」と抱負を語った。