令和4年7月

投稿日時

浄土歌壇
堀部知子 選 投歌総数159首

群馬 伊藤伊勢雄

軽鴨の親子のような登校児母親役は小六さくら

あたかも只今目の前を通り過ぎて行ったようにも思える臨場感。特に下句のさくらさんの貫禄が良い。

大阪 津村仁美

初めての老健暮しに戸惑うも緑地の青葉に希望を貰う 

上句は少し解釈が必要かと思うが、「老健」をストレートに受け止められない人もいるかも知れない。

栃木 小峰新平

春晴の日の菜園で十坪を耕しみれば玉の汁出る

春晴れとはいっても、まだ肌寒い日もあって、しかし結句のように表現されればその奮闘ぶりは見事。

滋賀 三宅俊子

紫のランドセル負いVポーズ撮りましょうかと行きずりの人

東京 蚫谷定幸

土筆もて青空へ向け字を書こう平和の二文字ウクライナへと 

大阪 林 孝夫

カンボジアの孫と日本の私たち結ぶSNSに嬉し会いたし

山口 沖村宏明

汽車の旅とある野中の停車場は草の花咲きまたも君の香

愛知 吉田喜良

雄猫の兄弟そろって家出して雌猫一匹ぽつねんとをり

宮崎 髙平確子

生垣の新芽は伸びてあかあかとわが家の周りに幕を張るごと

宮崎 小野加子

制服着てモデル気取りに写る孫スカートの仕付けを付けたままなり

愛知 横井真人

浜島の浜辺に立ちて亡き妻と静かに聞けり百千鳥の声

埼玉 岸 治巳

五百羅漢ひそひそ話しているかな小春日和の人の居ぬ間を

三重 服部浩子

健やかに百歳目ざす夫と居て芋茄子苗を三列植え終う

長崎 片岡忠彦

塩をふり庭でこんがり炭火焼き湯気立つ鮎をはふはふ食べる

大阪 津川トシノ

田に水が入り空を映しいつ夕日を横切るカラスが三羽

元歌は「田に水が入って空を映してる」。

浄土俳壇
坪内稔典 選 投句総数246句

青森 中田瑞穂

牛の誕生有線で聞く青嵐

「有線で聞く」の生活感がいいなあ。青嵐は牛の子の誕生を祝っているみたい。

京都 孝橋正子

本堂前の小さき靴や春休

春休のいい風景だ。小さい子が本堂に来ているのだが、もしかしたら祖父母といっしょかも。

大阪 津川トシノ

だれかしら顏かくれるほど紫蘇の束

誰かが持ってきてくれた紫蘇の束。抱え上げると顔がかくれるほどもあったのだ。あたり一面に紫蘇の香が漂っている。

大阪 光平朝乃

苗と土買うて籠れる春の庭

山口 沖村去水

晩春のベンチの釘の錆びてをり

秋田 高橋さや薫

パンジーや遠足の子らハイチーズ

東京 山崎洋子

初夏の回転扉君ひらり

大阪 西森呑子

花わさび瀧音遠く聞きながら

山梨 山下ひろ子

柿若葉きょうは十九の誕生日

兵庫 堀毛美代子

夏燕ささやま城址巡り来る

宮城 石山流雲

足湯して餡パン食えば山笑う

滋賀 三宅俊子

春愁の寺門かんぬき閉まる音

埼玉 三好あきを

外階段ところ狭しと春花鉢

佐賀 織田尚子

列車二両あまたの春愁佐賀平野

福岡 古野ふじの

捥ぎ立てを受取る重さ夏蜜柑

岩手 菊池 伉

空き店舗目立つ街並白木蓮

和歌山 福井浄堂

春月や娘夫婦の去りし跡

大分 小林客愁

放牧の牛の涎や春青む

長野 中澤 修

挟まれて歩幅大きく新入児

兵庫 吉積綾子

葬列の喪服をぬらす春の雨

長崎 平田照子

片蔭を選びジグザグ散歩道

富山 山澤美栄子

時々はごめんねと言い草むしる

埼玉 須原慎子

理学部の白衣まぶしき青葉かな

長崎 片岡忠彦

校門に流れのような梅雨の傘

奈良 畷 崇子

崇子流グツグツスープ春の昼

原句は「昼餉かな」だった。「春」という季語がのどかで豊かな気分をもたらした。スープがうまそうになった?