令和4年3月

投稿日時

浄土歌壇
堀部知子 選
投歌総数149首

宮崎 小野加子

小三の孫の書き初め届きたり感動したよとスマホに載せる

いかにも今時の一首。スマホでお孫さんとの交信は楽しいでしょうね。嬉しいことです。

埼玉 岸 治巳

眼鏡かけ帽子をかぶりマスクして見知らぬ人となりて出掛ける

作者自身も、又他の人もお互いに見知らぬ人となり、出歩くことも又一興か。駅の改札口で人を待っていたら、全員がマスクをしていたが。

愛知 横井真人

赤赤と輝く南天の実に向かい寝たきりの妻の奇跡を祈る

晩秋から冬、球形で赤色の果実をつける南天にむかい、妻へのひたすらな祈りをその実にこめる作者の思いがストレートに伝わる。

三重 服部浩子

半日のリハビリ終えて木枯しに杖握りしめ一歩踏み出す

長崎 久田浩一郎

世の中はそんなに悪くはないものよ春日の午後に桜餅食べる

東京 田中恭子

十Bの鉛筆をもて写経なしし父のあと継ぐ年初の誓ひ

滋賀 三木憲治

君がうた歌壇に見つけわが胸の消えざりし想いたぎりたつなり

京都 根来美知代

辻地蔵を囲むフェンスに高高と貼られたる整体院の広告

栃木 小峰新平

餌が多く今年は鳥も食べ飽きしや枝に残れる柿を見上ぐる

大阪 橘ミヨ子

飛行機で帰省の孫の三年経ちわれを見下ろす背丈伸びたり

福井 杉谷小枝子

豪雪を踏みつつ山家の初詣で老母の分まで祈るは嬉し

兵庫 吉積綾子

お年玉に手の切れそうなそのお札息子に謝しつつ先づ仏前に

アメリカ 生地公男

ジャポニカの注連飾り新年をカリフォルニアロールで先駆者偲ぶ

長崎 吉田耕一

逆上がりできずに泣きし少年期の鈍さ変わらず八十路超えたり

添削元歌の四句目、「あの頃」を「少年期」とした。

浄土俳壇
坪内稔典 選
投歌総数201首

大阪 渡邊勉治郎

なずな摘む万葉びととなりて摘む

「摘む」の反復が楽しい気分をかもしている。反復した言葉の響きは、平城京の時代の人になった気分を増幅する。すてきな春の到来だ。

青森 中田瑞穂

横断の子等の返礼春隣

横断歩道にも春が近い。ということを子どもたちの元気な返礼が示している。気分を五七五の言葉の風景で表現している

神奈川 上田彩子

二日より仏教講座のユーチューブ

ユーチューブという新しい言葉が「二日」という古い季語と取り合わせられている。その取り合わせ、仏教講座の今ふうな楽しさを伝える。

山梨 山下ひろ子

冬芽満つセンター試験三日前

アメリカ 生地公男

褒賞に癒しの猫と初まぐろ

大阪 大内純子

バレーシューズ三足干して三日かな

長崎 吉田耕一

初雪や血圧計を腕に巻く

埼玉 塚﨑孝蔵

初稽古おしるこ食べて決意生む

東京 山崎洋子

山眠る造り酒屋を守るやう

秋田 高橋さや薫

老夫婦懸命に生く冬の薔薇

東京 津田 隆

初春や団欒のなか我はいる

奈良 中村宗一

水仙が咲けば青畝忌近ずきぬ

長崎 吉田耕一

大寺の改築遅々と春隣

奈良 中村宗一

水仙が咲けば青畝忌近ずきぬ

熊本 土佐千洋

大寺の改築遅々と春隣

大阪 越野和美

えべっさんコロナもってけたのんます

京都 孝橋正子

さみどりの葉っぱを鼻に雪達磨

東京 樋口七郎

寒椿下町見下す飛鳥山

長崎 村田一子

白髪になりて造るや注連縄を

京都 根来美知代

玉子酒部活の声の届く窓

埼玉 三好あきを

冬薄さゆれ大揺れして武州

和歌山 福井浄堂

スキップで弾んで転ぶ冬帽子

大阪 津川トシノ

狼のお伽話や初あられ

神奈川 藤岡一彌

内海の真珠筏の初明かり

東京 池田眞朗

ゆりかもめカーブの先の海に春

山口 沖村去水

汝は歌を吾は句を詠まんお正月

原句は「お正月」でなく「謹賀新年」だった。