浄土宗新聞

日常にも記念日にも選ばれる30年続く街の名パティスリー 1010banchi

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戦国時代に伊勢松阪城主として名を馳せたキリシタン大名・蒲生氏郷の洗礼名に由来した「レアン」(367円)。

 松阪牛で知られる三重県松坂市。松阪駅から続く商店街の一角に近づくと、客の車が吸い寄せられるように集まる一軒のパティスリーが見えてくる。
「1010banchi」は、30年にわたり松阪で親しまれてきた店だ。オーナーシェフは、この地で生まれ育った小泉直也さん。生家は問屋・製造卸を手がける菓子店で、修業を経て26歳で実家のあった場所に店を構えた。店名には、その原点である所在地が刻まれている。
 開店当時、洋菓子店はまだ「ケーキ屋さん」と呼ばれる時代。そのなかで小泉さんは、いち早く生のフルーツを使ったケーキ作りに力を入れた。看板商品の一つがミルフィーユだ。「賞味期限は1時間」。できたての食感を味わってほしいと打ち出した一品は評判を呼び、テレビでも取り上げられた。
 一方で、「話題になる商品は必要です。でも地方都市では、それだけでは続きません。また来たいと思ってもらえるお菓子を作らなければ」とも語る。特別感がありながら、日常にも溶け込む。そんなバランスが大切だ。
チョコレートケーキ「レアン」は、「この店の味を遠くの家族にも届けたい」という声を受けて生まれた。しっとりとしたチョコスポンジでクリームをサンドし、持ち運びしやすく仕立てた。冷やすと生菓子のような食感がよみがえる。使うのは、香り高いクーベルチュールチョコレートのみ。口に含むと、しっとりとした生地の中で、冷えて締まったクリームが歯触りを残す。やがて体温でとろりと溶け、チョコのコクとクリームの甘みが口の中にゆっくりと広がる。大切な人に届けたくなるのも、よくわかる。
 新しいものもいち早く取り入れるが、そのまま追うことはしない。「技術を重ねた今だからこそ、流行を店のお客様に合う形にできる。お菓子作りが本当に楽しいです」
 店頭に立つと、「シェフ、今日も来たよ」と常連客から次々に声がかかる。そんな一言が、30年続く何よりの証なのだろう。
(ライター:岡本茉衣)

オーナーシェフの小泉直也さん。ケーキに合うブルーベリーを自ら育てる試みも行う
  • 〒515-0075 三重県松阪市新町1010
  •  TEL:0598-21-7123
  • 営業時間=10時~18時 カフェ:10時~18時(LO.17時30分)
  • 定休日=水曜日
  • JR紀伊本線「松阪駅」から徒歩約15分
  • ■駐車場(10台)あり
  •  ※価格は税込