浄土宗新聞

清涼な蕎麦の香りを楽しみ150年の歴史に思いを馳せる 虎ノ門 大坂屋 砂場

投稿日時

東京都港区・梅窓院檀信徒

清涼な蕎麦の香りを楽しみ150年の歴史に思いを馳せる 虎ノ門 大坂屋 砂場
「揚げ茄子とおろしそば」1200円。六代目は北海道産のそば粉を使うという

再開発による相次ぐ高層ビルの建設や新駅の開業で、著しく変化を遂げている東京・虎ノ門。そうしたなかで150年間、暖簾を守り続けている蕎麦の老舗「虎ノ門 大坂屋 砂場」を訪れた。
砂場といえば「藪」「更科」と並ぶ江戸前の三大蕎麦屋として知られ、その歴史は明治時代に遡る。
もともと「砂場」という屋号の起源は、戦国時代に大坂城を建設する際、和泉屋という麺類屋が資材の砂置き場に開店したことが由来。その後、徳川家康が天下を取ったときに、江戸に移ったという。
明治5年(1872)、砂場本家『糀谷七丁目砂場藤吉』から、稲垣よそ(初代)とその夫である稲垣音次郎(二代目)が暖簾分けされて開業した。よそは武家とのつながりが深く、幕末の三舟のうち勝海舟、山岡鉄舟が通い詰めたと言われている。店には山岡鉄舟が贈ったと言われる書も残されている。
現在の建物は大正12年(1923)に建てられた。関東大震災や東京大空襲などの被害を免れた貴重なもので、登録有形文化財に指定されている。今年3月、道路拡張により「曳家工法」で店舗の移転が完了した。
お店の歴史と伝統に思いを馳せつつ、早速に、初夏にぴったりのメニュー、「揚げ茄子とおろしそば」を注文。
ほんのりとした清涼な香りが口に広がり、しかもつるりとした繊細な喉越しを楽しめる。そば粉が八割・つなぎが二割のいわゆる「外二」。つゆは、本節と宗田節のブレンドで、コクがありながらも上品な味わい。大根おろしと細かく切ったシソが揚げ茄子をさっぱりとさせ、カリカリのちりめんじゃこの食感がアクセントになっている。
「伝統を大切にしつつ、時流に合わせて変えるべきは変えています。お客さまの信頼に足るよう努力し、それがさらなる信用につながる。″暖簾が当主を作る〟という心持ちが代々受け継がれ、今日まで続けてこられたのでは」と話すのは、六代目当主の稲垣隆俊さん。
夏の夕べ、一献傾けつつ蕎麦をたぐるのはいかがだろうか。
(ライター:岡本茉衣)

店舗情報

店主で「虎ノ門大坂屋砂場」六代目の稲垣隆俊さん
店主で「虎ノ門大坂屋砂場」六代目の稲垣隆俊さん

〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-10-6
TEL:03−3501−9661
■営業時間
 月、火 11時~14時30分、16時30分〜20時 
 水、木、金 11時~14時30分、16時30分~21時30分 
 土 11時~14時頃(売り切れ次第終了)
■定休日=第3土曜日、日、祝日
■地下鉄「虎ノ門駅」より徒歩約3分
■駐車場なし
※価格は税込