令和8年10月
歌壇
大分 小林 繁
やあ先輩お元気ですかと屈託の無き友趣味は剣道五段
評
さりげなく読み込みながら先輩と後輩の間柄がおのずと伝わってくる。さわやかな一首。
奈良 中谷理英子
背くらべをすればぐーんと孫に負けまけるが嬉し背を合わせつつ
評
ほほえましい一首。下句の「負けるが嬉し」が有効にはたらいている。
宮城 西川一近
事務的なやりとり息子はこなしゆく住職として以前のように
評
内心作者の誇らしい気持ちがあらわれている。事務的なやりとりまでもこなすわが子に。
広島 山本玲子
み社の芽の輪くぐりて本殿に今年の夏の息災祈る
アメリカ 生地公男
点滴の滴数えて日は暮れて帰る日決まらず夏は過ぎゆく
神奈川 小笠原嗣朗
われを見てどうぞ席立つご婦人に嬉しくもあり寂しくもあり
滋賀 大林 等
大小の西瓜ごろごろ夏畑そのつるながめ孫と楽しむ
京都 根来美知代
文鎮をまとめて運ぶ書道部の顧問は黒衣文化祭開く
京都 観山哲州
喜寿迎え初恋の頃を思い出す妻には言えぬ甘き秘めごと
大阪 林 孝夫
おいしいよ母の西瓜は娘からメールと共に動画が届く
三重 本城美喜子
手描きの暑中見舞がラインから涼しげに泳ぐ金魚が二匹
大阪 津川トシノ
吊り橋の向うで手招きする子供杖を頼りに一歩踏み出す
長崎 吉田耕一
懐かしい人の名前が出てこない霞がかかりあのそのあのと
滋賀 前川千壽代
真っ直ぐにうす紅かかげ大鉢の蓮華に命の力漲る
長崎 荒井慎一
太ったり痩せたりの夏わが精進料理に頼りたき思いに
評
下句「夏精進料理に頼りたい」の元句を少し直した。
俳壇
福岡 伊熊悦子
大西日じゅうじゅう揚げるメンチカツ
評
西日をものともせず、という感じ。「じゅうじゅう」のオノマトペは生活力の快さです。
京都 池内久勝
図書館へちょっと寄り道夏時間
評
「夏時間」を楽しむ感じがよく伝わります。「ちょっと」という日常語の軽さが効果的。
東京 山崎洋子
昼まではすっぴんでいる大暑かな
評
暑さをうまくしのいでいますね。酷暑も猛暑もへっちゃらという感じ。
東京 阿部悦子
九品仏ヘ渡る踏切鳳蝶
愛知 伊東敬子
片蔭を拾ひ拾ひてバス停へ
大分 小俣千代美
掛け声と共に一日や夏盛り
岩手 佐々木敦子
甘酒の乾杯老の誕生会
長崎 佐藤哲子
きらきらと飛魚跳ぶや平戸沖
和歌山 福井浄堂
窓開けて潮の匂ひや夏座敷
滋賀 村松経子
床の間に今朝の一作桔梗活け
福岡 稲永順士
息を止め体を乗せて南瓜切る
福岡 稲永順士
息を止め体を乗せて南瓜切る
神奈川 上田彩子
エルベ川石のテラスは夏暮色
山口 沖村去水
晩夏光乾ききりたる川の石
東京 小室清恵
やや傾ぐ円空仏に蝉しぐれ
長野 出澤悦子
打ち水の上を舞ひゐる蜆蝶
青森 中田瑞穂
昼寝より目覚む卵を割る如く
奈良 中村宗一
根性は曲がっていませんねじり花
大阪 根来譲二
片蔭の道にピアスのガードマン
京都 根来美知代
遠花火厚めのピザの焼き上がる
埼玉 藤波悦子
僧の捲く散華が膝に施餓鬼寺
三重 眞泉廣道
シャキシャキと浅漬け食うや夏の朝
京都 観山ヒロクニ
麦秋や飛びて戻らぬブーメラン
石川 山畑洋二
露草やここら北前船の里
大阪 越野和美
夏休み子らを見かけんどこいるん
評
原句は「見かけずどこにいるん」でした。「ん」を二つ使って大阪弁の感じを強めました。